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Vol.13 No.9

SI機関Ⅱ
野口 勝三
Katsumi NOGUCHI
エンジンレビュー編集委員/本田技研工業株式会社
JSAE ER Editorial Committee / Honda Motor Co.,Ltd.

講演紹介(1)コルモゴロフスケールを活用したMBD開発

 坂井ら(1)は、LESとコルモゴロフスケールを活用し、リーンバーンエンジン開発に適用可能なMBDプロセスを提案している。RANSによる解析では、超高乱流場の筒内において実際の乱流強度を示していない。一方、LESは強力なタンブル流が生成された条件下の筒内流動予測には、有効であるものの、RANSのように筒内の平均的な乱流強度や時刻履歴を算出することは困難である。そこで、LESで計算したコルモゴロフスケールをCFDの新指標として活用できないか検討している。図1にて、定常タンブル比が4.0から5.6に拡大すると渦構造が崩壊し、小さなコルモゴロフスケールの領域が縮小している。上死点近傍において、タンブル渦を維持することは重要である。そこで、コルモゴロフスケールを活用したMBDにより、図2に示すような樽型燃焼室形状を考案した。その計算結果は図3に示すように、上死点においても渦構造が維持され、小さなコルモゴロフスケールが広く分布している。そして、その有効性を実機により実証(2)したと報告があった。

講演紹介(2)希薄燃焼における未燃炭化水素排出挙動

 岡嶌ら(3)は、希薄燃焼技術の課題である未燃HCの生成・排出過程を明らかにするため、高速FIDを用いてTHC濃度の瞬時計測を行っている。λ1.19でTHC濃度は最も低く、さらに希薄な条件でTHC濃度が上昇する。量論混合比付近と希薄条件では、THCの排出挙動が異なる。図4に示すように、希薄条件では、発熱量の低いサイクルの排気中THC濃度が高くなる。λ1.75の発熱量が高い上位5サイクル、低い下位5サイクル(Bulkクエンチサイクル)、400サイクル平均について、熱発生を図5に、筒内THC濃度を図6に示す。Bulkクエンチサイクルでは、熱発生が緩慢であり、熱発生が低い(図5)。そのため筒内での燃料の燃え残りが多く発生するとともに、火炎が壁面に近づかないため壁面近傍のTHC濃度が、平均的なサイクルと比較して高くなると報告があった。

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【参考文献】
(1)坂井 洋志、木村 幸四郎、大村 哲生、高橋 大志:コルモゴロフスケールを活用したスーパーリーンガソリンエンジンのMBD開発、自動車技術会2023年秋季大会学術講演会講演予稿集、No. 20236039
(2)木村 幸四郎、坂井 洋志、大村 哲生、高橋 大志:カーボンニュートラル実現に向けた熱効率50%スーパーリーンバーンエンジンの開発、自動車技術会論文集Vol.54、No.5, 20234418
(3)岡嶌 燎平、窪山 達也、森吉 泰生:火花点火機関の希薄燃焼における未燃炭化水素排出挙動の解析、自動車技術会2023年秋季大会学術講演会講演予稿集、No. 20236040