内燃機関の誕生から100有余年、その間の数多の技術が実用化され、その出力密度、熱効率は飛躍的に向上し、排気エミッションは大幅な低減がなされてきている。近年では、排気規制や燃費規制といった社会要請に呼応して急速な技術進展が図られたことは、本誌の読者のみなさまも大いにかかわりのあることと思う。
次の世代に向けての内燃機関の進化は、やはりカーボンニュートラルの実現といった社会からの大きな期待に応えていくことであろう。多くの国、地域が2050年までの温室効果ガス排出を実質ゼロとする目標を掲げるなかで、明確な答えが見通せない現状においては、あらゆる可能性を探索することが肝要と考える。仮にCCSなどの固定化技術が、排出量に見合うほどに大規模に実用化されれば、現在と同じような化石燃料の消費を続けることが可能かもしれないが、一方で持続可能性といった観点からは、サスティナブルかつカーボンニュートラルな燃料(CN燃料)の導入、普及が必要ではないだろうか。
昨年、国内のスーパー耐久レースにおいて、水素エンジン車が参戦し見事完走を果たしたことは大きなニュースとなった。今年からは、水素に加え、バイオ由来の合成燃料やバイオディーゼル燃料を用いる車両も加わり、検討の幅が拡がってきている。海外においてもWRC(World
Rally
Championship)では、今年からCN燃料100%(合成燃料いわゆるe-fuelとバイオ燃料の混合)となっており、F1においても来年からの導入が計画されているようである。このようにレースの世界や一部の地域では、CN燃料の導入が始められており、今後の低コスト化や大量普及が期待されるところである。日本においては、グリーンイノベーション基金事業において、CO2等を用いた燃料製造技術開発や水素・アンモニアのサプライチェーン構築などのプロジェクトが進められている。
CN燃料に限らず電力などエネルギー全般において、今後は化石燃料への依存度を下げ、再生可能エネルギーの割合を高めていくことには異論のないところであろう。そこで、利用可能なエネルギー総量について調べてみた。まず全世界のエネルギー消費量は、2018年において580EJほどであり、これまでに平均して2.5%/年の割合で増加している。(1) 一方で技術的に利用可能な太陽光エネルギー量は年間32,000EJほどと見積もられており、(2)
世界のエネルギー消費量の50倍程度となる。再生可能エネルギーは太陽光エネルギーだけではもちろんないが、技術ポテンシャルとして数十倍しかないことに驚いた。今のままの増加率で2050年を迎えた場合にはエネルギー消費量は現在の2倍となり、化石燃料への依存を下げることはますます困難になることが容易に想像される。また別の観点として、再生可能エネルギー源の豊富な南半球から、消費地である北半球へのエネルギー(CN燃料)の輸送量が増えると、新たな地球規模でのエネルギーの潮流が生じることになり、その総量にはなんらかの配慮が必要になるかもしれない。以上のことから、これまでにも増してエネルギー消費の低減、内燃機関に当てはめると熱効率やシステムとして利用効率の向上が重要になる。
そんなことも思い浮かべながら、近場の移動はもっぱら自転車となっている今日このごろである(単に、楽チンで気持ちがよいだけなのですが)。
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