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事務局だより

JSAE島田
市ヶ谷駅のモザイクアート
The Mosaic Art of Ichigaya Station
島田 和弥
Kazuya SHIMADA
JSAE事務局
JSAE Secretariat

 市ヶ谷駅をよく利用する方は、改札前に設置されている不思議なモザイクアートをご覧になったことがあるだろう。

 14年前に設置されたこのモザイクアートを、私はずっと単なるデザインだと思っていた。しかし最近、このアートが囲碁の盤面を表現していることに気づいた。「長生の図」という将棋で言うところの千日手の形(1)だそうだ。このモザイクアートは、駅前にある「日本棋院」とJRが囲碁の普及を目的に企画・設置したものである。

 今年創立100周年を迎える日本棋院は、国内最大の囲碁団体であり、土日には子供向けの囲碁教室が開催されている。私の子供もここに通って囲碁を学んでいる。

 子供が囲碁を始めたきっかけは、昨年の夏である。夏風邪で学校を休んでいた子供が、一日中タブレットでYouTubeを見ていたため、妻が「もっと有意義な時間の使い方を」と思い、囲碁アプリを試させた。それ以来、囲碁が子供の日課となり、気づけば私も一緒に囲碁を始めることになった。

 「子供の成長は早い」とよく言われるが、囲碁に関してはまさにその通りである。親子で同時に始めた当初、私は「ここはこう打つんだよ」と教える立場だったが、今では完全に逆転し、子供に全く歯が立たなくなった。5子のハンデをもらっても完敗する有様で、今後、私が子供に勝てる日は来ないだろうと覚悟している。この話を日本棋院の先生にしたところ、「それは囲碁あるあるですね」と笑われた。

 思い返せば、私が自技会に入った頃、「ヒカルの碁」という漫画が大ヒットしており、その影響で日本棋院にも多くの人が訪れていた。当時は活気に溢れていたが、時代の変化とともに、囲碁界全体の勢いがやや弱まっているように感じる。そんな中、AIの登場が新しい局面を切り開いている。AIは囲碁の盤面に対して評価値を算出できるようになり、今まで感覚的に判断していた手筋の良し悪しをコンピュータで評価できるようになった。この技術は囲碁の進化に大きな影響を与え、新しい定石が生まれるなど、ポジティブな変化が見られる。

 我が家ではこの1年で子供が囲碁を始め、とても楽しんでいるが、全体的にはプレーヤー人口が減少しているのが日本の現状である。一方で、世界に目を向けると、中国や韓国では今なお人気が高く、子供の習い事の定番として広まっている。日本棋院では、さまざまなイベントや大会を開催し、幅広い世代に囲碁を広めようとしている。特にオンライン対局やイベントを通じて、新しいファン層の獲得に努めている。こうした活動が、日本でももう一度囲碁を盛り上げるきっかけとなり、囲碁人気の復活につながることを一ファンとして期待している。

 日本棋院では大人向けの講座も開かれている。本会の委員会等で市ヶ谷を訪れる機会があれば、ぜひ日本棋院に立ち寄ってみてはいかがだろうか。

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【参考資料】
(1)【黒先】JR市ヶ谷駅の構内にある囲碁アート「長生(ちょうせい)」を解説します!【囲碁講座】, https://youtu.be/MH66S50Mt_E