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コラム

吉冨 和宣
人流・物流に対してできること
吉冨 和宣
Kazunori YOSHITOMI
本誌編集委員、日野自動車(株)
JSAE ER Editorial Committee / HINO MOTORS,Ltd.

 コラムに初めて登場します、編集委員の吉冨です。
 今年も秋になりましたが、観測史上最も遅い猛暑日の記録を更新する地域も多くあるようです。暑いですね。
 秋といえば行楽シーズンです。皆さん、どこかに行きたくてソワソワしませんか?
 私が秋で思い出すのは、現在の会社に入社する前に、地方でトラック・バスの乗務を5年ほどしていたことです。当時、私の所属していた会社の貸し切りバスは、旅行が多くなる秋時期が繁忙期でした。町内会などの少人数・日帰り旅行が多く、25名乗りの小型ハイデッカーバスや、中型バスが好まれていたことを覚えています。繁忙期があれば閑散期もあり、2月や8月は車も車庫でお留守番をし、運転手さんはミキサー車に乗ります。2000年の規制緩和でバスに参入した運送屋ならではの兼務かもですね。秋の行楽シーズンは稼ぎ時で、年間の売り上げの大きな割合を占めます。私は主にトラック乗務でしたが、この時期だけはバス部門の“専属さん”では運転手が足りなくなるため、時よりですがバスの応援乗務をやっておりました。今回は、ある地方運転手Yさんの貸し切りバス乗務の一日を紹介します。
 小型バスが好まれる理由は、少人数に適していることに加え、お客様の年齢層を考えると“ドアトゥドア”で、本来であれば途中から歩かなくてはいけない不便な観光地でも“運転手の腕次第”で目的地の傍まで“歩かずに“行けるといった理由もあります。ただし、マイクロバスでは皆さんのテンションも上がらないようで、バスで観光と言えば”デッカー“が雰囲気的に好まれてました。事前の下調べは、観光地に電話を掛けたり他の運転手に聞いたり(Google Mapのストリートビューなんて当時は無い)しますが、当日の現地で“えっ?”と思うような狭路もあります。考えるのをやめて前進するのみです。案外行けたときのお客様の好感度には “どや顔”で答えます。このようなテクニカルな道がある仕事は、専属さんが配車されることが多く、応援者には冠婚葬祭の送迎が配車されます。ルートは低難易度になりますが、冠婚葬祭には地域ごとのルールも多く、例えば葬祭では火葬場への往路と復路のルートを少し変えたりします(魂が家に帰って来ないように“巻く”ためだそうです)。
 ある日の日帰り旅行の流れは、朝4時出社・点検・準備・出庫、5時にお客様乗車、朝から酒屋を探しながら予定表にある目的地を回り、昼食場所に到着。待機もしくは“一緒に”昼食を摂り(なぜか用意されている場合も有り)、昼からの観光地へ移動、大半はお休みですが一部起きている人のお話の相手、夕方は帰路にある大浴場付き宴会場で待機もしくは“一緒に”夕食です(結局は宴会のお世話係、カラオケを選曲とか‥‥)。添乗員やガイドがいる場合、お客様対応は多少楽ですが、添乗もガイドもオプション料金ですので、お客様次第ではワンマンです(が多かった)。トラックでは付帯作業を問題視されますが、上記はバスならではの付帯作業ですね。その後、最終降車が夜8時、帰庫9時、日報を書き終えた後に洗車や室内清掃をして11時に退社します。Yさんは応援ですので頻繁な業務でないものの、結構長い一日です。お客様が降車の際に「今日は一日ありがとう」と言って頂けるときは、大変だった疲労が達成感に代わる気がします。
 昨今、問題になっていますドライバーの長時間労働の解決は、まだまだ時間が必要と思います。個人でできることを考えると、私たちが身近に接する宅配便や路線バスのドライバーさんに「ありがとう」と感謝を伝えることも、運転手さんの“疲労回復”や“やる気”には役立つかなと思います。また、再配達が無いようにするとか、置き配を活用するなどで、物流を止めない努力を皆で行うことが重要な気がしています。
 しかし、自動運転が普及したら、誰に「ありがとう」を言えばいいのかは、わからないですね。

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