TOP > バックナンバー > Vol.11 No.6 > 2030年度燃費基準について
自動車からのCO2排出量は、我が国全体の排出量の約2割を占めており、地球温暖化対策を推進するため、自動車からのCO2排出量を削減することが重要な課題となっている。また、日本でのカーボンニュートラルの実現のためには、ハイブリッド自動車を含む電動車の普及促進や燃費・電費の一層の向上といった総合的な取組が必要と考えられる。「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」においては、エネルギー消費効率の向上を図ることが特に必要な機械器具を、「特定エネルギー消費機器」として定めており、現在、様々な電気機器に加え、乗用自動車、貨物自動車が特定エネルギー消費機器として定められ、エネルギー消費効率(燃費・電費)の改善が図られている。本稿では当該省エネ法により定める2030年度以降に販売される乗用車に適用される燃費・電費基準(以下、「2030年度燃費基準」という)の概要について紹介する。
自動車の燃費基準は、1979年6月の省エネ法制定以降、1972年12月に策定された1985年度燃費基準をはじめとし、その後の燃費改善努力を踏まえ更新されてきた。2017年度には、販売された車両全体の加重調和平均燃費が既に2020年度を目標年度とする燃費基準を上回り、エネルギー政策や地球温暖化対策の観点から、新たな燃費基準の策定による一層のエネルギー消費性能の向上の促進が必要と考えられた。そこで2018年3月から国土交通省と経済産業省の燃費合同会議(座長:京都大学 塩路昌宏教授)において、新燃費基準について審議を行い、その結果が2019年6月にとりまとめられた 。2020年3月には同とりまとめを踏まえ、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律施行令(昭和54年政令第267号)」をはじめとする関係法令の改正を行い、2030年度燃費基準を策定したところである。
対象車種(電気自動車およびプラグインハイブリッド自動車の追加)
これまでの乗用車の燃費基準では、ガソリン、軽油または液化石油ガス(以下、「LPガス」という。)を燃料とし、道路運送車両法第75条第1項の型式指定を受けたもの(型式指定自動車)のうち、乗車定員9人以下の乗用車および乗車定員10人以上かつ車両総重量3.5 t以下の乗用車を対象としていが、2030年度燃費基準では、これらに加えて新たに電気自動車およびプラグインハイブリッド自動車を対象に加えた。これは、これまでの燃費基準の策定時には出荷実績が少なかったこと等から燃費基準の対象とはしていなかったところ、第5次エネルギー基本計画(2018年7月3日)では「次世代自動車の新車販売に占める割合を2030年までに5割から7割とすることを目指す」とされており、自動車新時代戦略会議中間整理(2018年8月31日)では、このうち電気自動車およびプラグインハイブリッド自動車の割合を2割から3割としていることなどを踏まえ、今後相当程度普及が見込まれることから決定されたものである。
新燃費基準では、外部から充電される電力を使用する電気自動車およびプラグインハイブリッド自動車が、ガソリン自動車等とともに企業別平均燃費値の算定の対象となる。このため、新燃費基準ではWell-to-Wheel評価(WtW評価)により、電気自動車等のエネルギー消費効率を算定することとした。このWtW評価とは、下図のように、ガソリン等の燃料や電力が車両に供給されるよりも上流側のエネルギー消費も考慮して、エネルギー消費効率を算定するものであり、例えば電力については、発電段階に遡ってエネルギー消費を評価し、ガソリンを燃料とする車両と比較可能な形で評価するものとなっている。
また、2030年度燃費基準の基準値は以下の式および図のとおりであり、2016年実績と比較して32.4%の燃費改善を求めている。
燃費基準値(FE:km/L)は、車両重量(M:kg)に応じて以下のとおり。
燃費基準値の関係式を以下に図示する。
以上のとおり2030年度燃費基準においては、電動車の普及を促進しているとともに、今後の取組として、例えば、モード試験では反映されない燃費向上技術の達成判定における評価等、更なる燃費改善の取組も期待されていると考えている。引き続き関係省庁と連携しつつ、エネルギー消費効率の改善、CO2排出削減を進めるため、自動車単体対策のみならず総合的な対策も含め、適切に検討して参りたい。
Koji OE (Safety Office, Vehicle Technical Regulation Division, Road Transport Bureau, Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism)