TOP > バックナンバー > Vol.13 No.3 > 潤滑・トライボロジー(その1)
川村ら(1)は、エンジンオイル消費量低減による粒子状物質の発生抑制を目的に、レーザ誘起蛍光法を用いてピストンピン周辺のオイル油膜厚みを観察した。図1に評価用に作成したエンジンを示す。フロント側からの観察を可能とするため、タイミングベルトやシリンダ部に工夫がなされている。図2に膨張行程時のオイルリング下部へのオイル流入の観察結果を示す。いずれの回転数においても、側圧を受けたスラスト側(写真左側)のオイルがクリアランスの大きいピストンピン側に押し出されている様子が確認され、ピン側からオイルリングへの供給油量が多くなることを明らかにした。今後、オイル消費量低減による環境負荷低減に向けた継続検討が期待される。
渡部ら(2)は、オイル上がりや摩擦損失低減を目的に、TOPリングの油膜可視化と油膜厚みの定量化を試みた。図3に、レーザ誘起蛍光法の輝度読み取り範囲を示す。撮影範囲を小さく限定し、スカート部をマスクするなどにより、精度よくTOPリングの油膜厚みを測定することを可能とした。検討では、#8と0W-20の2油種を用い、エンジン回転速度、リング荷重、温度などの影響を確認した。回転数の影響を図4に示す。回転数の上昇や粘度の増加により油膜が厚くなるなど、定性的に妥当な結果が得られている。今後、様々なエンジン油の膜厚測定が実施され、オイル上がりや摩擦損失低減に有効な粘度特性や添加剤配合が明らかとなることが望まれる。
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