TOP > バックナンバー > Vol.13 No.8 > 新エンジン紹介特集に寄せて ~市販エンジン熱効率向上の現在~
地球温暖化対応に向けたCO2削減の社会的要求に対応して様々な技術開発が行われている。自動車からのCO2排出量の削減に対しては電気自動車(BEV)が注目されており、急速にそのシェアが拡大することは間違いない。一方で内燃機関を用いた電動自動車(HEV,PHEV)は、エネルギーセキュリティ、各種資源の需要供給バランス、また最近注目されているカーボンニュートラル燃料の可能性等の観点から重要な位置を占め続けると認識している。
今回、近年上市した新エンジン技術を紹介することで、今後の技術開発の余地や方向性を把握する一助となることを目指した。継続して紹介する予定である。
本特集号の冒頭にあたり、2022年の新エンジンの動向等を簡単に振り返った。
エンジンから排出されるCO2を削減させることは、正味熱効率を向上させることであり、内燃機関が発明されて以来、熱効率向上の因子(表1)を改善する絶え間ない技術開発を積み上げてきた結果、継続的に向上している(図1)。
SIP革新的燃焼技術の研究では正味熱効率で50%以上を確認、その後AICEではそれを上回る目標を設定して研究が継続しており、今後量産エンジンの熱効率向上が期待される。
2022年の日本市場に発表された乗用車用ガソリンエンジンは7種類(表2) 乗用車用ディーゼルエンジンは2種類、商用車用ディーゼルエンジンは2種類(表3)である。
ガソリンエンジンは、すべて筒内直接燃料噴射(DI or DI+PFI)であり、ストローク・ボア比(St/B)が1.2を超えるロングストロークエンジンもある。圧縮比は自然吸気エンジンでは13以上となっており、熱効率向上を目指して着実にスペックが改善している。圧縮比を約20年前のNAエンジンの平均と比べると3以上高くなっていることがわかる(図2)。
ディーゼルエンジンは、燃焼システムや構造系の見直し等により燃費・排気・動力性能の両立が図られている。革新的なコンセプトのマツダの直6エンジンの詳細は本企画記事をお読み頂きたい。
内燃機関の理論熱効率の向上(圧縮比、比熱比)、損失の低減(冷却損失、時間損失、未燃損失、ポンプ損失)、機械損失を低減、制御技術を改善する要素技術はエンジンのDNAと見做すこともできる。
これら要素技術の改善代は徐々に限界に近づいていると言われてきたが、その進化は留まるところを知らない。パワートレインとしての効率は、電動技術やカーボンニュートラル燃料等他のDNAとの組み合わせや最適化により、さらに磨かれるものと確信している。
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