TOP > バックナンバー > Vol.13 No.8 > 新型2.4L直列4気筒ガソリンターボエンジンの開発
カーボンニュートラル社会の実現に向けた世界各国での燃費・排出ガス規制強化への対応と、お客様の期待を超える魅力的なクルマを生み出し続けることの両立は、内燃機関にとってますます難しいチャレンジとなっている。新開発の2.4L直列4気筒ガソリンターボエンジンは、カーボンニュートラルへのマルチパスウェイアプローチの一環として、「高効率」「クリーン」「気持ちいい走り」を開発コンセプトに、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)の理念に沿って基本素性から徹底的に磨き上げた。パワートレーンには8速ATに加えて新型ハイブリッドシステムをラインナップし、より一層クルマの楽しさをお客様にお届けできるように努めた。
新型2.4Lガソリンターボエンジンの開発コンセプトは、「高効率」「クリーン」「気持ちいい走り」の3本柱である。TNGAの高速燃焼技術を活かし、熱効率と出力を高いレベルで両立した「高効率」なエンジンであること。幅広い車種と地域に展開できる「クリーン」な環境性能を有すること。そして、いつまでも乗っていたいと感じられる「気持ちいい走り」であること。これらを同時に実現することを狙いとした。表1に主要諸元を示す。ボア×ストロークをはじめとするエンジン基本骨格から全面刷新した。高速燃焼技術を基盤に、圧縮比を高めながら、低速からの力強いトルクと高い出力性能を実現し、お客様に長くご愛顧頂けるエンジンを目指して開発した。
Movie.1 新型2.4Lガソリンターボエンジン パワートレーンシステム
TNGAの要諦は徹底的な素の向上である(図2) 。 本エンジンでは、ストローク/ボア比の最適化(図3)と高タンブルポート(図4)の採用による筒内乱れの強化(動画2)、そして直噴インジェクタを燃焼室中央に配置(図5)したスプレーガイド燃焼の採用などにより燃焼素性を大きく改善した。スプレーガイド燃焼は、点火プラグ周りに成層混合気を形成することで、安定した燃焼を実現する手法である。吸気工程で形成された混合気に着火し微小な火炎核を生成し、ほぼ同時に行われる膨張行程噴射による巻き込み流れ(エントレイン流)によって火炎核が誘引され、成層混合気に接触して火炎伝播に移行する。こうして高い燃焼安定性が確保できる(図6)。
Movie.2 筒内乱れの強化
高速燃焼を軸に、可変オイルポンプなどの低フリクション技術や冷却水制御弁を活用した熱マネジメント技術など、損失低減を積み上げ「高効率」化を実現した(図7、8)。 また、緻密な噴射制御、高い燃焼安定性を活かしたバルブタイミングの最適化、三元触媒のターボチャージャ直下への近接配置(図9)による触媒早期活性化などの技術で「クリーン」な排気を実現した。 「気持ちいい走り」は我々開発チームが特にこだわった。小型のターボチャージャによってレスポンスを向上させながら、タービン翼の形状工夫などで出力性能とも両立させた(図10、11)。これにより、加速Gのデザイン自由度を大きく拡大させ、力強い走りに仕上げることができた。
ターボエンジンならではの「走りのハイブリッド」本エンジンは従来型8速ATに加えて、新開発パラレルハイブリッドシステムと組み合わせた「走りのハイブリッド」もパワートレーンにラインナップした。 モータを活用した「走り出しの応答性」、ペダル操作に対して「ダイレクトな加速フィール」、そして、ターボエンジンならではの「高速域からの伸び」を狙いとした(図13)。 特に高速域では、積極的なリアモータ駆動の併用とエンジンマウント特性に応じた駆動力制御(図14)により、エンジントルクの増大に伴う静粛性課題を解決し、より大きなエンジントルクまで幅広く使うことを可能とした。3Lターボエンジン車に匹敵するようなゆとりのある走りと高い環境性能を両立することができた(図15)。
Movie.3 新開発ハイブリッドシステム
蒸気自動車の発明から約250年、自動車の普及により人々は自由に移動できる喜びを享受し、世界中で様々な産業の発展に貢献してきた。一方で、地球環境に様々な影響も及ぼしてきた。 カーボンニュートラル社会の実現を目指し、環境を守りながら「移動の喜び」を提供し続けることは我々の使命である。しかし、BEVやCN燃料などの普及にはまだ時間がかかる。また、地域事情によっても最適解は変わる。 本エンジンの導入により約40万t/年のCO2が削減できる見込みである。コツコツと技術を磨き、積み上げることで世の中に貢献する。それが我々技術者の役割である。お客様のニーズに合わせ、マルチパスウェイで、今できることに一生懸命取り組んでいきたい。
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