TOP > バックナンバー > Vol.13 No.9 > 排ガス低減
自動車の電動化が進む中でも、直ちにBEV化することがむずかしい車両カテゴリーでは内燃機関が当分の間使われることになるから、その効率と排気性能を向上させることが将来においても重要になる。ここでは大型貨物車やオフロード車用ディーゼルエンジンの排ガス低減に取り組んだ発表を紹介する。
山本(1)は大型重量貨物車の使用過程における尿素SCRシステムのNOx浄化性能をシャシダイナモと路上走行の両方で評価した。路上走行のNOx測定は車両の排気管に取り付けたセンサを用いるSEMS方式で行った。図1は同一の試験車両で積算走行距離が12万km、20万km、28万kmのときに測定したシャシダイナモ上のWHVCモード走行結果を示す。図中にNOx P.R.と書かれたNOx浄化率は、加減速の多い区間Aでは積算走行距離が増加するとともに小さくなるが、モード後半の定常走行区間Cでは低下の度合いは小さい。図2と図3は同じ車両の積算走行距離28万kmにおける路上走行の結果であり、それぞれ高速道路と一般道路の走行データを示す。NOx浄化率の値は、一般道路ではシャシダイナモデータの区間Aと、高速道路では区間Cと類似した結果となることが分かった。比較的簡単に路上走行の排気性能を評価できるSEMSを用いることで、長距離を走行する大型貨物車の使用過程における排気浄化システムの性能評価データを蓄積して製品開発やメンテナンススケジュールの設定に活用できることに期待する。
三井ら(2)は高い捕集性能と低い圧力損失を両立させた次世代型ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)の開発について発表した。図4に示すDPF内のガス流れシミュレーションを実施した結果、材料の大細孔を通ってすすが漏れているため捕集性能を上げるためには材料の大細孔を減らす必要があることが分かった。圧力損失低減に関しては図5に示すすす堆積時の圧力損失の挙動から、図中のdP Pore(すすが基材に侵入した際に生じる圧力損失の急上昇部分)を最小にする必要がある。そのためには小細孔を減らすことが有効である。大細孔量と小細孔量の指標として、図6に示す細孔径に対する細孔容積の分布図から定義したD90とD10をそれぞれ採用した。現行品と比較してD90が小さくD10が大きい次世代型DPFの材料を選定し、これにセル構造の検討を加えて設計した次世代型DPFを使ってエンジンベンチでPN試験を行った。その結果をFig.7に示す。PN排出量は現行DPFより約1桁低くなり、予想されるEuro7の規制値以下となった。
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