TOP > バックナンバー > Vol.13 No.9 > エンジンの効率向上
大橋ら(1)は,小型商用車を対象に走行時に使用頻度の高い部分負荷域の熱効率向上をねらったディーゼルエンジンのコンセプトを提示した。摩擦損失や補機動力を考慮した0次元エンジンモデルを用いて、代表出力条件におけるエンジン諸元の最適化を行った結果、従来エンジンと比較して、排気量を拡大することにより、高圧縮比化に伴う背反事項である冷却損失や最大筒内圧力の増大を抑制して図示燃料消費率を低減できる見通しを得た(図1)。
第2報では、自然吸気、高圧縮比に適した燃焼系として、従来と比べて小径多孔としたインジェクタと浅皿型燃焼室の組み合わせにより噴霧ペネトレーションの抑制と混合気の均質化をねらい、過度な筒内流動を抑制した結果、冷却損失の低減が図られた。最大筒内圧力の低減は、フリクション低減に有利であり表1に示すピストン系、クランク系、補機系の損失低減を図っている。特にクランク軸摺動部の細径化など設計諸元の考え方を第3報で詳細に説明している。以上のエンジン諸元選択、燃焼系の最適化と低フリクション化により図2に示すように正味熱効率の高い領域を部分負荷域にシフトすることに成功している。
なお、本エンジンシステムにおいては、EGRも廃止されており、冷却水量低減による補機動力低減が図られている。一方で、増大するNOxに対しては、SCR触媒容量を確保することおよびターボを廃したことによる触媒昇温の早期化により、排出ガス規制値以下となることが示されている(第1報)。
以上の取り組みにおいて、数値計算モデルにより、エンジン諸元、フリクション低減アイテム諸元の設定がなされていることは特筆に値する。
エンジンからのより一層のCO2排出低減に向けては、本講演や乗用車向けハイブリッド用エンジンでなされているように、エンジンの用途や使用領域に合わせた諸元選択が必要となろう。
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