TOP > バックナンバー > Vol.14 No.1 > ノック
上野ら(1)は、オクタン価が水素の火花ノック抑制効果に及ぼす影響をエンジン実験により調査し、化学反応モデルによるメカニズムの解明を試みた。
エンジン実験の結果、機関回転数によらず水素添加によりノックは抑制されたが、高速時(4800rpm)は低速時(2000rpm)に対して抑制効果が小さく、この抑制効果は高速時のみオクタン価の影響を受けることが示された(図1)。
二領域モデルによる未燃ガス領域の素反応解析から、低速時のノック抑制効果は、水素のOHラジカル消費による低温酸化反応の抑制(図2)によるものであることを示した。オクタン価の影響を受けないのは、この消費速度がオクタン価により変化しないためと考察している。また、高速時に抑制効果が小さいのは、低温酸化反応が生じていない(図3)ことと、低速時と異なる水素の消費経路で水素とOラジカルの結合によりOHラジカルが生成されるためと述べている。抑制効果がオクタン価の影響を受けるのは、このOラジカルがイソオクタン由来のラジカルから生成されるため、オクタン価によりOラジカル量が変化するためと考察している。
今回明らかにされた水素の化学的着火抑制のメカニズムは、Reformed EGR等の水素を利用したノック抑制や熱効率向上に対して有用な知見になると考えられる。
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