TOP > バックナンバー > Vol.14 No.1 > 計測 1
牧内ら(1)は、ディーゼル機関の冷却始動時1サイクル目における壁面での燃焼液滴の蒸発に着目し、特に遮熱コーティングを施したピストン頂面での蒸発特性を調べる研究を行った。実エンジンにおいて現象を観察することは困難であるため、本研究ではパルスレーザを用いて壁面を急速加熱し、上死点での壁内温度分布を再現している(図1)。インジェクタによって燃料を噴射して液膜を形成させ、噴射後200 msにおける液膜厚さをRIM(Refractive Index Matching)法を応用して測定することで、初期壁面温度と液膜厚さの関係を明らかにした(図2)。今回の発表では噴射後200 msにおける液膜厚さ評価であったが、燃料の壁面付着からの過渡的な液膜厚さ変化まで調べることができれば、さらに興味深い結果が得られるように思われる。
藤井ら(2)は、火花誘起ブレイクダウン分光法を用い、点火プラグで生成された火花放電のプラズマ温度を調べる研究を行った。実機での測定を可能とするため、点火プラグに光ファイバを組み込み、プラズマの発光を分光器へ伝達できるよう工夫がなされている(図3)。得られた発光スペクトルに対してシミュレーションソフトを用いたフィッティング(図4)を行うことでプラズマ温度を推定しており、定容容器における実験では他手法との良い一致が得られている。一方で、圧縮膨張機関における実験では発光スペクトルのS/N比が低下しており、プラズマ温度を算出する上で十分な精度でフィッティングができているか懸念がある。今後、S/N比の向上が達成されれば、実機での調査へ向けて強力な計測ツールとなると期待される。
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