TOP > バックナンバー > Vol.14 No.1 > 潤滑 2
小林ら(1)はDLC膜とMoDTC由来のトライボフィルム(計算ではMo-S-O)の相互作用において分子動力学法(MD)を用いた要因解析を実施した。DLCはCr-DLCとa-C:Hの2種で、摺動解析では、a-C:Hでは2面間はC-S結合で接着し、Cr-DLCではCrがMo-S-O膜に拡散してCr-S結合が増加し、a-C:Hよりも遷移層での剛性率が高い結果を得た。引き剥がし試験(図1)ではa-C:H膜ではMo-S-O膜との接着界面で解離が発生したが、Cr-DLCではCrがMo-S-O膜へ拡散した結合による遷移層となり、Cr-DLC上にMo-S-O膜が保持された。本研究はMD法を応用した有用な成果である。
中川ら(2)はピストンスカート部のパターンコーティングによる摩擦低減効果の研究を継続して実施し、今回は解析モデルを用いた摩擦低減効果を調べた。解析モデルの確からしさは浮動ライナエンジンでの実験値で確認し、スカートプロファイル部の直線部分へのパターンコーティングの付与とし、パターンコーティングの凹部の幅・位置・凹みの形状と摩擦低減効果(FMEP)の要因解析を行った。代表的な結果として、図2のようにオリジナルのピストンスカート形状に対して凹みの付与でFMEPは減少し、凹み部の幅が2.6mmから5.2mmの範囲で増えるほど摩擦低減効果が大きい結果が得られ、コーティングのパターン設計の有用性を示した。
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