TOP > バックナンバー > Vol.14 No.1 > 潤滑 1
金元ら(1)は、エンジンのオイル消費の増加に関連するピストンリング回転現象に着目し、回転力の発生メカニズムの解明を目的とした研究を行っている。本報では、ピストンの上下、並進および傾き運動により生ずるピストンリング回転力に対し、ランド圧に相当する圧力が及ぼす影響を、単体試験機および実働エンジンを用いて調査した。その結果、ピストンの並進運動時に圧力が加わると、ピストン回転力が小さくなることを明らかにした。その原因として、圧力が加わることでリングと溝間の潤滑状態が流体潤滑的な状態から混合潤滑状態に移動し、摩擦係数が小さくなったためと推察している。
岩田ら(2)は、自動車用エンジンのクランクシャフトとすべり軸受け間の摩擦低減を目的として、DLCジャーナルによる流体潤滑領域での摩擦低減メカニズムの検証を行っている。実験では、焼付き試験後のジャーナルおよび軸受の表面性状を、Atomic Force Microscopy で計測した。その結果、DLCジャーナルと摺動した軸受では、鋼ジャーナルと摺動した軸受および未使用の軸受に比べて、ナノスケールで平滑な表面が形成されており、流体潤滑領域での摩擦低減効果の一因は、軸受表面の微小な突起が研磨されたことに起因する可能性が示された。
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