TOP > バックナンバー > Vol.14 No.3 > 走行中給電
鉱山事業では、鉱物を積載、運搬する過程がCO2排出の50%を占めるということで、鉱物を運搬するダンプトラックの電動化が強く要望されているという。本論(1)で取り上げるダンプはペイロードで300t、ディーゼルエンジンの場合は約1800kWのエンジンを搭載する規模のものを指す。これをEV化するにあたっては鉱山用途特有の4つの課題があり、
(1) 消費電力が大きい
(2) 充電時の停車による生産量(稼働時間)の減少
(3) 大電力の電力インフラが必要
(4) バッテリの寿命の低下
を挙げている。鉱山用ダンプの運用の基本は、素掘りの鉱山の底から積載状態で地表まで登って積載物を降ろしてまた底へ下っていくものという(図1)。こうした運用であるため、登坂時には大電力を必要とする反面、下り坂での回生量は少ない。また、バッテリへの負荷が高く早期の劣化につながりやすくなる。これらの課題を解決する手段としてトロリ式を提案している。トロリ式とすることでバッテリ搭載量と負荷が軽減され上記課題の解決につながるほか、電力インフラにとってはピーク電力の低下につながる効果もあるとしている。試作機(図2)を製作して実証試験を開始するという。
島村ら(2)は、大型トラック等が高速道路を走行する際の電力収支について計算を行っている。大型トラックやトレーラーが高速道路を走行中急な登り坂が続く場合には、強力なエンジンを持っていても速度を維持できず登坂車線を使うことがある。これは反対に同じ坂を下る場合には、エンジン最高出力以上の仕事を回生できる可能性があり、それを回生できればエネルギーの有効活用になる。回生を受け入れる容量と失われる回生仕事量の関係を、25tトラックおよび44tトレーラーが国内の主要高速道路を走行した場合についてシミュレーションしている。
図(図3)は25tトラックが各高速道路を走行した場合に、回生可能電力と回生しきれない頻度について示したものである。200kW回生できれば中央道と中国道で数%のロスがあるものの、それ以外ではほぼ回生できるのに対し、回生可能電力が100kWの場合、一般的な高速道路で数%、中央道で10%以上、中国道で15%以上の時間で回生電力が余剰になる結果であった。また、余剰となる回生電力により走行できる距離についても試算しており、例えば前記25tトラックで回生能力が100kWの場合だと、中央道で約40km、中国道で約90kmになるという。これら回生できないエネルギーを登坂中の車両に供給できれば効果的としている。
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