TOP > バックナンバー > Vol.14 No.3 > 先進ガソリン機関技術Ⅰ
牛丸ら(1)は無振動で滑らかに回転する3気筒ピストンエンジンの開発について発表した。コンロッド機構をもたず、ピストンを駆動するラジアルアームロータと、固定されたシリンダから成る第1試作エンジン(図1)は、自立燃焼運転で8.1Wの外部軸出力が得られた。さらに構造強度向上と小型化を目的として改良ラジアルロータを採用した第2試作エンジン(図2)を製作中であり、手回しで回転させられることを確認した。無振動という特性を生かして家庭用発電機等への適用を目指しているとのことであり、ユニークな機構の今後の開発に期待したい。
石井ら(2)は耐ノック性に優れた合成燃料の組成を提言することを目的に、炭化水素を混合したときの耐ノック性の変化のメカニズム解明に取り組んだ。炭化水素の耐ノック性は、単成分の燃料として使ったときと他の炭化水素と混合したときとで異なる。図3は単成分燃料のリサーチオクタン価RONmonoと、RON60の正標準燃料(PRF)と混合したときのRON測定値から計算されるブレンディングオクタン価BRONの関係を表す。図中の破線より上にプロットされた炭化水素は、混合されることで単成分のときよりも耐ノック性が上昇する。 そのような性質をもつ炭化水素3種を選定し、BRONがRONmonoより大きくなる反応メカニズムを検討した。試験燃料を図4に示すフローリアクタに通して生成する反応生成物を量的に分析した結果、PRFも混合燃料も反応生成物の量が少ないほどRONは大きくなる(図5)。また混合燃料の反応生成物を、単成分燃料と混合燃料の両方から検出されたものと混合燃料のみから検出されたものに分類した結果(図6)から、単成分燃料では生成しない反応生成物がPRFと混合することで生成され、それが混合燃料の反応を抑制して耐ノック性を向上させていることが示唆された。
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