TOP > バックナンバー > Vol.15 No.4 > CI燃焼1
槙野ら(1)は、船舶用CN燃料として期待される回収CO2と再生可能エネルギー由来の水素との合成によるメタノールに注目している。ディーゼルエンジン適用への課題は着火性で、オンボード生成可能なジメチルエーテル(DME)との液-液混合にて2燃料を供給する方法を考案した。その基礎研究として、定容器によるメタノール-DME混合燃料の噴霧燃焼特性を調査した。燃料は加圧により液体の状態を保ちながら混合タンクで20分間攪拌した(図1)。DMEのモル分率を0.2、0.4、0.6として試験した結果、着火はモル分率0.6にて軽油に近い結果となった。メタノールの熱発生率は、初期に予混合的燃焼を示し、拡散的燃焼期間では最も高くなることから、酸素含有率の高さが速やかな燃焼に寄与していることが分かる。可視化では、モル分率0.6はメタノールに比べて液相が短く蒸発が改善し、軽油に比べてスス生成量が少ない(図2)。メタノールを含む燃料の熱発生率が高くなる要因は、噴霧火炎幅の広がりよりも噴霧中心の燃焼の活発さである。
難波ら(2)は、含酸素燃料のディーゼル燃焼において、軽油よりも噴霧の内部当量比が低く、噴霧中心まで燃焼領域が及ぶ火炎構造が、後燃えに及ぼす影響を解明すべく数値解析を行った。モデルはMusculusとKattkeの過渡噴流モデルを用い、対象を前述の講演紹介(1)の槙野らの実験データとした。本研究では、拡散燃焼と後燃えを対象としているため、噴霧到達距離にて計算と実験の比較では、噴射開始後1.0ms以降で良好な一致を示すこと、OH分布と噴霧内当量比分布の傾向が等しいことから、燃焼の考察が前述のモデルにより可能な事を確認した(図3)。拡散燃焼の解析では、噴射期間中における噴霧中心の当量比1を超える領域が、軽油に対してメタノールは少なく熱発生率の向上に繋がっている(図4)。後燃えの解析では、噴射終了後のエントレインメントウェーブと呼ばれるノズル先端からの空気巻き込みによる燃料過濃領域の縮小が、軽油に対してメタノールは早く、後燃えの低減に繋がっている(図5)。
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