TOP > バックナンバー > Vol.15 No.4 > SI燃焼2
カーボンニュートラルの実現に貢献できる技術として、水素を用いた希薄燃焼エンジンが注目されている。水素は燃焼速度が速く、CO2を排出しない特徴があり、副室火花点火エンジンを利用することで、希薄燃焼条件における効率向上やNOx排出量削減が期待される。山下ら(1)は、パッシブ方式の副室式ガスエンジンにおける水素燃料の着火特性をCFDで解析し、水素とメタンの燃焼挙動を比較評価している。図1に、水素とメタンの計算と実験の副室圧力履歴を示す。(b)は(a)における黒く囲んだ領域を拡大して示している。水素の等量比が0.6、メタンの等量比1.0と水素の方が低等量比にもかかわらず、着火後の圧力上昇は水素の方が早いことが分かる。層流燃焼速度の差により副室圧力履歴の立ち上がりに違いがでたと考察している。副室からの燃焼ガス流入による主室内での着火位置を評価するため、温度分布、OHと各燃料種の質量分率を図2に示す。燃料種を水素とした方がOHの生成(水素の消費)されている着火位置は、メタンの場合より副室に近く、着火にかかる時間も短いと報告が有った。本研究は、次世代燃料としての水素の可能性を示す重要な知見と考えられ、今後の更なる進展が期待される。
コメントを書く