TOP > バックナンバー > Vol.15 No.9 > エンジン部品・トライボロジーI
大塚ら(1)は大規模走行データと機械学習を組み合わせ、市場での部品の挙動を推定する手法を提案している。ユーザーが所有する車両のECUで扱うパラメータのうち、通信容量を考慮し車速、エンジン回転数などを収集し、対象とする部品の使われ方を推測している。これにより、エンジン開発段階で実施する耐久試験を最適化し、やり直し試験を減らすことを目的としている。市場から収集した多数のデータから当該部品の挙動を求めるにあたっては、計算負荷を減らすため、機械学習を使用している。機械学習では理論式は使用していないため、図1に示すように、当該部品の挙動に影響する要因をパラメータとすることで、パラメータ間の関係を可視化する工夫をしている。前刷には掲載されていないが、これにより求められた値は、実測値と比較的良い一致を示していた。種々のエンジン構成部品について、このような予測が可能となれば、最適設計や耐久試験条件の最適化に貢献するものと思われる。
幸島ら(2)はエンジンの軸受が焼き付く直前に軸受入口の供給油温が上昇することを発見し、そこから軸受の焼き付きメカニズムを推測している。軸受の単体試験機を用い、軸と軸受を電極と見なした静電容量法による油膜厚さ測定、軸と軸受間の電気抵抗測定による金属接触有無の測定、オイル入口、摺動面下流、摺動部付近の油温および軸受温度の測定を行っている。図2および図3に測定結果を示す。黄色の線が軸の駆動トルクを示しており、右端の値の急上昇が焼き付きの発生を示している。グラフ上方の紺色の線は静電容量法により求めた軸と軸受のクリアランスを示しており、ピンクで示す負荷の上昇と共に値が増加しクリアランスが小さくなっている様子が示されている。しかし、焼き付きが発生する数秒前に値が減少し、軸と軸受間に存在する物質の静電容量に変化があった可能性が示されている。これと時期を同じくして油温や軸受温度の上昇が見られる。この時点で試験を停止した場合には、軸受表面に損傷が無かったことから、この温度上昇は焼き付きによるものではない。さらに同時に軸受へのオイル入口ではオイルの逆流が確認されている。これらのことから、摺動により発生する熱が冷却により奪われる熱より過剰となることで熱暴走がおき、オイルが沸騰することで焼き付きが発生しているとの仮説が示された。軸受の焼き付きメカニズムの解明は大きな課題であるが、本研究はそれに対し非常に重要な知見を与えるものと考えられる。
陣内ら(3)はピストンスカートにオイルが供給されるルートについての解析を行っている。このためにはシリンダに付着する油膜の厚さの特定が重要となるが、これをガラスシリンダを用いてLIF(Laser Induced Fluorescence)法で測定している。LIF法では、摺動面がオイルで満たされている場合は問題ないが、気相が含まれる場合の校正が課題である。気相を含む佼正のためには金属表面に付着した油膜の厚さを特定する必要があるが、本研究では図4に示す工夫によりこの課題を解決している。測定結果によりピストンスカートにはシリンダに付着したオイルだけで無くクランクシャフトからはねかけられた液滴も供給されている様子(図5)や、オイルリング溝に設けられた油穴から供給されている様子が示された。ピストンスカート部の供給油量の特定は重要な課題であるが、本研究はその一助となるものと考えられる。
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