TOP > バックナンバー > Vol.15 No.9 > ガソリンデポ
(株)SOKENの中山ら(1)は「ガソリンデポジットの硬化メカニズム」と題した発表で、従来にはない条件で生成されるガソリンデポについて報告をしている。ここでいう「ガソリンデポ」とはガソリンエンジンの吸気系に付着したガソリン由来の堆積物のことで、今回対象としているものはPFI(Port Fuel Injection)方式の吸気ポートに形成されるデポジットである。これまでの研究では、この部分に形成されるデポジットは110℃以上で硬化するとされてきた。しかしながら昨今、PHEVなどエンジン稼働時間が短く110℃以上にならないと思われる運転条件でもデポジット生成が見られることから、110℃以下の温度条件でもデポジットが硬化するケースがあるかどうか検証を行った。
加熱と冷却を繰り返すサイクルで評価したところ、当初流動性を示していたデポジットは次第に硬化した(図1)。またこのデポジットはトータルの加熱時間が長いほど粘弾性率が高く(=硬化しており)、また、連続加熱よりも加熱と冷却を繰り返す方が硬化することが示された(図2)。
ここで形成されたデポジットは、FT-IRによる解析の結果(図3)、高温条件で形成されるデポジットがカルボン酸エステルを形成しているのに対し、カルボキシル基(1723~1725cm-1)とヒドロキシ基(3433cm-1)が別々に存在しており、分子間力(水素結合)で結びついていると推定している。そのため、高温では軟化し、低温では硬化する熱可塑性を有するデポジットとなっているとしている。
茨城大学の本橋ら(2)は「高効率ガソリン火花点火機関における燃焼室内デポジットのモデル化研究(第1報)」と題した発表で、ガソリンエンジン燃焼室内のデポジット(Combustion Chamber Deposits : CCD)を対象に、その生成メカニズムを明らかにし、そのメカニズムに基づいたCCDの厚みを予測するモデルを構築することを目的とした研究成果を報告している。CCDに関しては、先行研究により、燃焼室内で燃料や潤滑油の部分酸化物が壁面に凝縮・吸着することでデポジットの原料が生成され、その後、壁面温度が上昇することでデポジットの原料の縮合重合反応が促進され、高分子化することでデポジットが生成するという仮説が提唱されている(図4)。
本研究では、異なる運転モードで実験し、点火プラグ孔から測定用治具を挿入することでピストン冠面上のデポジットの厚さを計測する手法を開発している(図5)。
その結果、デポジットは運転時間5時間以降100時間まで、約0.1㎜の厚さで一定となった。またこのデポジット表面をSEMで観察したところ、いくつかの層が重なった構造が観察された(図6)。
講演会における質疑では、試験燃料に市販ハイオクガソリンを使用しているが、含有される清浄剤の影響についての質問があったが、明確な回答は得られなかった。
コメントを書く