TOP > バックナンバー > Vol.11 No.1 > 2 エンジンシステム設計・モデル開発Ⅰ
半田ら(2-1)は評価依存型の適合手法に替わるエンジンの新しい適合手法を開発した。エンジンの骨格検討フェーズからモデルを活用して目標性能を達成する物理状態量を明確にし、実際のパワートレイン制御と連成して適合値を最適化する。実機完成後はエンジン、トランスミッションの順番でモデルから実機に置き換えて適合の完成度を向上させ、最後に実車での確認を行う(図2-1)。プロセスを通して一連のモデルを用いることによって、物理状態量を指標とした一貫性のある開発プロセスが構築できた。今枝ら(2-2)は新開発プロセスにおける適合へのモデル活用について発表した。吸排気モデルと燃焼モデルを改良し、実際の適合にモデルが活用できることを示した。
天野ら(2-3)はEGRガスの凝縮水によるエンジン部品の腐食リスクを予測するため、凝縮水の量とpHを予測するモデルを構築した。結露モデルで凝縮水の量を計算し、酸成分について反応・揮発モデルで凝縮水のpHを計算する。実機の排気ガスを冷却して得られた凝縮水量は結露モデルの計算結果と一致し、モデルの妥当性が検証できた。酸成分ガスと空気を混合して容器中の水に流入させる実験装置を製作し(図2-2)、温度環境を変化させて水のpHを計測した。そこで得られた知見によって反応・揮発モデルを改良した結果、計測結果と一致する凝縮水pHの計算結果を得ることができた(図2-3)。