TOP > バックナンバー > Vol.11 No.1 > 11 計測/診断/評価Ⅰ、Ⅱ
笠原ら(11-1)はノック音評価に対してDNN(Deep Neural Network)を用いた新たな評価技術の構築を試みている。今回の報告はエンジン放射音からノック音をより正確に分離抽出する方法とノック音の評価指標に関する。図11-1は手法の概略を示す。ノック音の分離抽出には信号位相変化を考慮したコヒーレンス関数を導入し、高精度なエンジン放射音からのノック音分離に成功した。評価指標にはノック音と推定雑音の比を用いている。この指標はエンジン回転数に依存せずノックに対して0~1.5の範囲で変化し、エキスパートの聴感と相関性がある。現在は放射音と筒内圧のペアデータを必要としているが、さらに進んで筒内圧計測を省けるとさらに有用性は高まると思われる。
奥井(11-2)は車種車型が多い重量車を対象にテストベンチによるRDE代替評価手法を検討した。この手法は仮想車両モデルと実エンジンシステムをリアルタイムに協調制御する拡張HILS法をベースとし、事前に実車走行して調べた車速と風速の関係を用いて、車速に合わせた走行風をエンジン、DPF、SCRの各部位毎に与える方法である。この走行風考慮は排出NOx等に影響が現れる。図11-2はHILS評価と実車走行RDE試験結果との比較を示す。道路勾配を考慮していないHILS評価には一部に実車との差異が見られるが、講演では勾配考慮により精度向上した結果が報告された。ベンチでのRDE評価法は有用性が高く、今後の進展が期待される。