TOP > バックナンバー > Vol.11 No.1 > 12 DPFⅠ、DPFⅡ、GPF
セッション「DPFⅠ」ではDPF(ディーゼル微粒子捕集フィルタ)でのPM酸化除去モデルによる解析手法の研究が2件、DPF再生時の排出ガス挙動の把握に関する研究が1件報告された。ここではDPF再生時の排出ガス挙動の把握に関する取り組みについて紹介する。 山本ら(12-1)はディーゼル車の排出ガス対策として必要不可欠なDPFについて、DPF細孔内に堆積したPMを除去する「DPF再生時」の排出ガスを測定した。これまでDPF再生頻度は低いとして排ガス挙動は注目されなかったが、再生頻度が高い場合には排出挙動は無視できない可能性がある。路上走行時における排出ガス挙動について、尿素SCRシステム搭載車(図12-1)と非搭載車(EGRのみ)(図12-2)の車両について試験を実施した。DPF自動再生開始時にはポスト噴射による未燃燃料の前段酸化触媒での不完全酸化に起因するCO、HCの排出、尿素SCRシステム搭載車では、NH3の脱離による一時的な排出と、後段酸化触媒でのNH3酸化に起因すると考えられるN2OおよびNOx排出量の増加が確認された。また図12-2の尿素SCR非搭載車ではEGR機能停止に起因するNOxの排出量の増加が確認された。
セッション「DPFⅡ」ではDPFの再生では除去されないアッシュ(エンジンオイル添加剤由来の金属酸化物)に関する研究が5件報告された。いずれもアッシュ堆積メカニズムの解明を目的とした研究であるが、ここでは特にDPF上流におけるアッシュ生成メカニズムに関する取り組みについて紹介する。 横林ら(12-2)はDPF内部におけるアッシュ堆積の高精度な予測モデルの構築には、エンジンオイル燃焼からDPFに至る過程でのアッシュ反応過程の把握が重要であるとし、反応場の温度がアッシュ成分へ及ぼす影響について確認した。エンジンオイルに含まれる添加剤としてCaサリシレート(硫黄-無)と、Caスルホネート(硫黄-有)を反応管にて模擬空気雰囲気下で温度を変化させ(973、1173、1373K)、生成するアッシュ成分を定量分析した。図12-3にCaサリシレート、図12-4にCaスルホネートの各温度での分析結果を示す。主成分は硫黄成分の有無にかかわらず、973Kの温度域ではCaCO3であり、温度が上昇するとCaOに変化することが示された。また、硫黄を含む添加剤の場合、973Kの温度域ではCaSが生成し、温度上昇に伴い、CaSO4がわずかに生成することが明らかとなった。本結果から、高温域ではCaOが主成分となることが判明し、得られた反応経路に基づいた平衡反応計算から、アッシュ成分を定性的に予測できると結論付けている。
セッション「GPF」では, 直噴ガソリン車からPMを捕集するGPF(ガソリン微粒子捕集フィルタ)触媒の開発、PM捕集メカニズムの解明に関する研究が5件報告された。GPFはPMを捕集し、PM中に含まれるSootを燃焼により除去する役割があるが、同時にアッシュの堆積が問題となる。一方、アッシュは触媒再生初期段階でSoot燃焼を推進することも報告されている。ここではアッシュがSoot燃焼性にもたらす効果に関する研究を紹介する。 伊藤ら(12-3)はFe2O3、ZeO、CaSO4、Ca2P2O7を代表的なアッシュ成分としてcarbon blackと1:1で調製し、モデルアッシュを作成して燃焼促進効果を調査した。Sootの燃焼性は50%カーボンが重量減少した際の温度T50により評価した。表12-1にアッシュ成分それぞれの燃焼温度T50を示す。成分によって燃焼性が異なり、Fe2O3はcarbon blackのみと比較して約80℃低下しており、最も燃焼促進効果が大きいことが判明した。また、Fe2O3のSoot燃焼速度について、燃焼試験を行い、各温度でのSoot重量の時間変化を測定した(図12-5)。その結果、550℃以上の温度領域ではFe2O3のSoot燃焼促進が顕著であることを明らかにした。