TOP > バックナンバー > Vol.13 No.3 > SI機関(その1)
瀬戸ら(1)は可変動弁系を用いた筒内状態量制御による冷間エミッション低減のメカニズム解析を行った。THC排出メカニズム解明のため、実機での高速排ガス計測を行い。壁面クエンチと浮遊液滴に由来するTHCと、壁面付着に由来するTHCに切り分けることで、蒸発促進と付着低減の効果を定量的に評価している。またPN粒径分布計測結果(図1)より、PN低減については、LIVO(吸気開弁時期遅角化)およびNVO(排気閉弁時期進角化)共に大粒径側のPNを温間レベルまで低減できるとしている。可視化により、これは液滴燃料の蒸発促進によるものであると報告があった。冷間時のエミッション低減は、大きな課題であり、今回のメカニズム解明は、有効な知見になると思われる。
田嶋ら(2)はガソリン機関用直噴インジェクタの多段噴射が、燃料の壁面付着による液膜形成に及ぼす影響を調べている。燃料液膜の計測には、屈折率マッチング(RIM:Refractive Index Matching)法を用いて、非蒸発条件(Tamb=298K)と蒸発条件(Tamb=433K)にて解析が行われている。図2の非蒸発条件では、単段噴射と比較して多段噴射の方が領域Ⅰの燃料液膜厚さが小さくなっている。これは分割されたことにより各噴射での燃料噴射質量が減少し、噴霧のペネトレーションが低下し、微粒化が促進されたためだと考えている。また図3の蒸発条件では非蒸発条件下と比較して燃料液膜の面積が減少している。高温の雰囲気と壁面によって、燃料の蒸発が促進されたためである。そして噴射の分割回数増加に伴い、燃料液膜面積がわずかに増加しているという。これは分割回数増加により、高温にさらされる時間が短くなり蒸発が抑制されるため。もう一つは、後段噴射により前段噴射の燃料液膜が冷却されて、蒸発が抑制されるためと考察している。
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