TOP > バックナンバー > Vol.14 No.1 > 計測 3

Vol.14 No.1

計測 3
飯島 晃良
Akira IIJIMA
本誌編集委員、日本大学
JSAE ER Editorial Committee / Nihon University

 火花点火機関の熱効率向上技術として副室を活用した希薄燃焼が挙げられる。副室式の燃焼には、副室内に燃料を噴射して積極的に副室内の空燃比を制御しようとする「アクティブ型」と、副室内に燃料噴射弁を持たない「パッシブ型」がある。パッシブ型は燃焼室がシンプルであることが利点であるが、主室とのガス交換で副室内ガスの状態が決まるため、特に希薄時に安定運転が困難になるなどの課題がある。
 この課題を克服するために、副室内の掃気状態などを正確に見積り、それを改善することが重要であり、数値流体解析(CFD)を用いたモデルベースド開発(MBD)が行われている。しかしながら、数値解析結果の検証を行うための実験データの取得も不可欠である。
 保木本ら(1)は、「パッシブ副室式ガソリンエンジンにおける副室内混合気形成過程の可視化」と題して、副室内の流動、混合気分布、火炎形成の測定を行った結果を報告した。
 図1に示すように、副室内にレーザ光照射用と画像取得用の観測窓を設けたパッシブ型可視化副室を用いて、単気筒エンジン運転中の計測を行った。測定項目と条件を表1に示す。エンジンおよび副室の仕様は「排気量662.5 cm3, 圧縮比10.2、副室容積割合2.45%、噴口径φ1.5、6噴口」である(詳細は本論文参照)。
 図2に副室内流動をPIV(粒子画像流速測定法)で計測した結果を示す。吸気バルブ開き時に連絡孔から流入した吸気流によって反時計まわりの流動が形成され、その後ピストン圧縮により主室内混合気が副室に流入、膨張行程では副室から主室に向かう流れが観察される。また、副室内に計測の都合上存在するデッドボリュームによるものと思われる流れも観測されており、副室内の形状が主室燃焼にどのような影響を与えるのかを明らかにするうえでも有効な実験だと思われる。このほか、副室内自発光撮影と指圧解析により一連の燃焼過程における副室内火炎輝度、副室内での火炎の進行度合い、副室と主室の圧力差そして主室圧力で計算した熱発生率の関係をもとに、副室燃焼の基本的特性が、火炎画像を元に説明されている(詳細は原著を参照)。
 以上のように、本研究で示された副室燃焼の可視化に基づく各種計測結果および計測手法は、副室燃焼シミュレーションの構築と精度向上等、MBDを行う上で有用な研究だと考えられる。

×

この記事(あるいはこの企画)のご感想、ご意見をお聞かせください。
今後のコンテンツづくりの参考にさせていただきます。

コメントをお寄せいただきありがとうございました。

職種

職種を選択してください

コメント

コメントを入力してください

閉じる
閉じる
【参考文献】
(1) 保木本 聖、森吉 泰生、窪山 達也、江頭 周、永井 良卓:パッシブ副室式ガソリンエンジンにおける副室内混合気形成過程の可視化、第34回内燃機関シンポジウム講演論文集、No.20234667