TOP > バックナンバー > Vol.14 No.3 > 先進ガソリン機関技術III
熊谷ら(1)は、省燃費化を目的として、ハイブリッドパワートレイン最適化のモデルベース研究を行った。内燃機関には高い熱効率を求めて、直噴インジェクタを備えた副室ジェットリーンバーン燃焼システム、高効率ターボ過給、吸気早閉じミラーサイクル、温度スイング遮熱を想定している。最良効率点のエンジン回転速度は2000rpmと定めた上で、負荷は自由として検討を行っている。図1に制約なく正味熱効率(BTE)を最適化した結果と触媒入り口温度と圧力上昇率に制約を与えた結果を示す。制約無し仕様ではBTE47.8%、最も厳しい制約で47.2%の結果を得たという。次にハイブリッドパワートレインの燃費最適化結果を図2に示す。バッテリ容量に合わせた燃費に最適な内燃機関パワーがあり、外部情報により燃費が改善する事が分かる。また、外部情報により始動回数を大幅に低減できると報告があった。本研究はハイブリッドパワートレインのシステム全体最適をモデルベースで詳細に検討されている。特に47%以上の高い熱効率と外部情報の活用という二つの点で興味深く、有益な知見となる事と思われる。
久間ら(2)は、新開発3.5L V6ガソリン過給エンジンをオフロードSUVに適用した。これまでの4.6L V8 NAエンジンを超える動力性能を実現したという。表1に新旧エンジン主要諸元を示す。高負荷域のノッキング改善や排気温度低減によるλ=1領域拡大、比出力拡大を開発課題としている。燃焼コンセプトは、TNGAエンジンシリーズに活用されている高速燃焼で、レーザクラッドバルブシートを採用して高乱れを実現したという。図3に示すように、乱れ強度を増すことで、排気温度を低減し、過給圧増加が可能となり、高出力化を実現している。新(V6)旧(V8)エンジンの出力性能を図4に示す。新型V6エンジンにて最大出力260kW、最大トルク650Nmを達成している。また図5に示すように、最大熱効率は、36%を達成したと報告があった。
田中ら(3)は、約11年ぶりの復活となるロータリーエンジン8C型の燃焼技術について紹介している。ロータリーエンジンは、扁平な燃焼室形状(図6)により壁面表面積が上死点でレシプロエンジンの約2倍、さらに圧縮や膨張の工程時間が約1.5倍長いため冷却損失が大きくなる。本開発では、これらの課題に対して、理想に近づけた新しい燃焼状態を目標としている。熱効率改善のため前型の13B型より圧縮比を高め、それに伴うノッキングを抑制するため、燃料供給を直噴化し、Cooled EGRシステムを採用している。Cooled EGRを導入することで高負荷運転域での排気温度を低減でき、全域λ=1運転を実現し、燃費とエミッションを共に改善したという(図7)。図8に13B型と8C型の出力に対する正味燃料消費率(BSFC)を示す。BSFCが最大25%改善し、さらに欧州Euro6d規制にも適合したと報告があった。本エンジンは、プラグインハイブリッド用発電機として、ロータリーエンジンのコンパクトな特徴を生かし、エンジンからモータジェネレータを横一列に配置してエンジンルームに収めている。電動化に向けた新たなロータリーエンジンの復活に期待したい。
コメントを書く