TOP > バックナンバー > Vol.14 No.3 > CO2低減に関する共同研究(AOI)
石油連盟と一般社団法人日本自動車工業会は、2030年ごろの市場を見据えて、ガソリン車およびディーゼル車に搭載が見込まれる将来エンジンの燃焼方法と従来の燃料種の組み合わせの最適化によるCO2削減を目指した共同研究(呼称AOIプロジェクト)を2020年度より実施している。「石油連盟-日本自動車工業会間のCO2低減に関する共同研究(AOIプロジェクト)について(第2報)」と題する基調講演では、このAOIプロジェクトの概要説明と今年度の計画および、これまでの成果の概要が報告された。プロジェクトは2022年度までの基礎研究フェーズが終わり、2023年度からは実証フェーズに入っている。
この中で成果の一例としてガソリン研究成果の概要が報告された。本プロジェクトの目的として、「将来の高効率エンジン(ガソリンエンジンならばスーパーリーンバーン等)に適する液体燃料組成(レシピ)を明確にする」ということが挙げられており、オレフィン量と含酸素化合物を変えた試験燃料(表1)を用いて単気筒エンジンで評価した結果が示された。例えば含酸素燃料とオレフィンを強調した燃料はベースのレギュラー燃料よりも様々な負荷においてリーン限界とノック限界が拡大し熱効率が向上した(図1)。
この結果からWLTCモード走行をした際のCO2排出量もシミュレートしており、ハイブリッド車を想定した場合、高熱効率化と合わせて燃料の炭素含有率の低下の効果も加わり、CO2排出量が削減することが示された(図2)。
将来のディーゼルエンジンと液体燃料の組み合わせに関する研究としては、「異なる性状をもつ合成燃料が大型ディーゼルエンジン性能に及ぼす影響要因についての燃焼可視化による一考察」と題して新エィシーイーから報告がされている。
将来のディーゼル燃料の一例として、FT法による合成燃料であるパラフィン系燃料を想定し、蒸留特性、動粘度、セタン価を変化させた7種類の試験燃料(表2)を用いて可視化エンジンにより燃焼状態を観察している。燃焼状態は火炎画像を基に火炎の到達距離と輝度の分布で評価した(図3)。
動粘度を変えた燃料DS-8,DS-8B,DS-8Jで比較したところ、DS-8より動粘度の高いDS-8Bでは可視火炎の先端がわずかに伸びたが、さらに動粘度の高いDS-8Jでは逆に先端が短くなった(図4)。この原因として、DS-8BはDS-8に比較して高動粘度により微粒化が抑制されたことにより火炎が伸びたが、DS-8Jは他の2燃料に比べて噴射率が低く噴射時間が伸びているため火炎が壁に衝突するのが遅くなったためとしている。ただし用いた試験燃料系では動粘度を変化させる際に他の物理量(蒸留性状など)も変化しており、原因の詳細な解析はできていない。同様に蒸留特性の違いを比較した際も、燃料の軽質化に伴う蒸発促進による影響と思われる結果(燃焼期間の短縮)が出ていたが、動粘度も同時に低下しており、その切り分けはできていない。
また、セタン価の影響(DS-8A;セタン価59とDS-8C;セタン価89との比較)についても評価しているが、有意な差は見られなかった。この点については会場での質疑応答でも問われていたが、今回の試験条件が、圧縮時の筒内温度が1000K以上となっており、既に高温のためセタン価の影響が出づらかったためと考察していた。そのため、セタン価についてはより低い温度で試験すれば差が出る可能性あるとしている。
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