TOP > バックナンバー > Vol.14 No.8 > 商用EVトラック導入における課題とコスト
商用EVトラック導入には自拠点におけるEV充電(基礎充電)の環境づくりが重要である。複数のEVを自拠点で充電するため、充電設備導入の規模や運用における課題が自家用EVとは異なる。本記事では、商用EVトラック導入における課題とコストについて説明する。
2050年カーボンニュートラル実現に向け、乗用車は2035年までに、新車販売で電動車100%を実現し、商用車は8トン以下の小型車は新車販売で、2030年までに電動車20~30%、2040年までに電動車・脱炭素燃料車100%を目標とし、8トン超の大型においても先行導入を目指し、2030年までに普及目標の設定することにしている(1)。電気自動車の定義には、ハイブリッド、燃料電池車両も含まれるが、以降の文章においては、バッテリ式電気自動車を「EV」とし記載し、中でもEVトラック導入におけるコストについて取り扱う。
小型EVトラックが日野自動車、いすゞ自動車、三菱ふそうトラック・バスをはじめとする各社から発売されている(図1)。現状、EVトラック自体が都市内輸送向けをターゲットにしている点、経路充電や目的地充電といった出先での充電環境がまだ十分に整っていない点から、EVトラックへの充電は拠点における基礎充電が中心になっている。そのため、EVトラックの導入する事業者においては、「拠点への充電環境整備コスト」および「充電による電気代コスト」が検討すべき大きなポイントになる。
EVトラックには基本的に普通充電用と急速充電用のふたつの充電ポートが備えられている(図2)。充電器の仕様や工事内容によりばらつきがあるが、普通充電器の本体価格が数十万円(6 kW出力のもので15~70万円程度)、設置工事が数十~百万円程度であり、急速充電器の本体価格が数百万円(50 kW出力のもので250~530万円程度)、設置工事が数百万円程度となる(2024年10月時点 弊社調べ)。既存の電気設備や導入する充電器の台数・出力により、受電設備の増強による追加コストが必要になるケースもあり、導入するEVの仕様、充電が可能な時間を踏まえて、最適な充電環境づくりが求められる。また、商用EV拠点においては、駐車スペースや業務動線を考慮し、使い勝手が良い充電環境を整えていく工夫も必要である(図3)。
日々の充電による電気料金については、各拠点の電力契約や使用方法により異なるため一様ではないが、例えば高圧契約を一例とすると、1ヵ月の電気料金は基本料金、電力量料金、燃料費調整額等、および再生エネルギー発電促進賦課金で構成されており、さらに単純化すると「1ヵ月で使用した電力量(kWh)」と「契約電力(kW)」に関する料金に分けられる。EV充電に関わる電力量(kWh)は充電した量(内燃機関車における給油量)≒EVの消費電力量に依存する。走行距離や電費といった「EVをどう使ったか」によりコストは変動するが、ディーゼル車の燃料コストと比較するとおよそ半分以下に削減が期待できる。
一方、契約電力(kW)は、高圧契約の場合、契約電力が500kW未満の場合デマンド料金制となる。デマンド料金制は、各月の契約電力をその1ヵ月の最大需要電力(デマンド値)と過去11ヵ月の最大需要電力の内いずれか大きい値とする制度であり(3)、日々の建物側の使用電力や充電出力・タイミングが影響する。言い換えれば「充電器をどう使ったか」によってコストが変わる。本格的に複数台のEVを充電する拠点においては、ディーゼル車の燃料コストの比較にて半分以下を実現するには充電器の制御(エネルギーマネジメント)も重要となる。
商用EVトラック向け基礎充電環境の導入・運用における課題、コストについて記述した。新しくEVを導入する事業者にとっては、車両そのものに加えて、使い勝手が良く、コストを最小化できるような充電環境の提案・導入が求められている。商用EVのための環境づくりという観点では、非接触式充電やバッテリ交換式といった取り組みや、商用EV向けの経路充電の取り組みが行われており、今後の商用EV拡大に向けて新たな選択肢が増えていくことが期待される。
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