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GR8→S20型→FJ20型→RB26DETT→VR38DETTとレース用エンジンから発展してきた高性能エンジンの系譜を紹介する。
S20 型 (1969年~1972年) 図4
モータリゼーションの幕開けと共に、モータースポーツが盛んになる。
1960年代、日本GPが開催されると自動車性能をお客様にアピールする場としてのレースが注目され、各メーカーはこぞって高性能車を開発し、レースに参戦した。 プリンス自工は第1、第2回日本GPで惨敗すると総合優勝を期して本格的なレーシングカーR380(図1)を開発。 エンジンは当時の最先端の4バルブDOHC直列6気筒 GR8エンジン(図2)を開発した。第三回日本グランプリにて1-2フィニッシュを飾り雪辱を果たす。
GR8エンジン:1996cc 直列6気筒4バルブDOHC 226ps/8400rpm。
S20型エンジンの誕生:
レース用に開発されたGR8を市販車仕様に改良しスカイラインに搭載した。 初代GT-R(図3)の誕生である。
S20型開発の大きな目的はレース用エンジンのレースポテンシャルを残しながら生産エンジンとしてコストダウンをすることにあった。 スカイラインGT-Rは、国内レースで50勝したが、最終的にはR380用GR8と同じ出力まで出した。
GR8からの主な変更点。
・カム駆動:ギヤ式→チェーン駆動
・潤滑:ドライサンプ→オイルパン式
・気化器:ウエーバー製→ミクニ製ソレックス3個
主要諸元:
水冷直列6気筒ガソリンエンジン。 DOHC。 スカイラインPGC10型に搭載
Bore 82.0mm × Stroke 62.8mm。 排気量:1.989ℓ。 出力:160ps/7000rpm。 圧縮比:9.5。
1970年代末ごろになると、排気規制対策がほぼ決着し、再び高性能エンジンの競争が激化した。 競合他社の4弁DOHCエンジンの投入に対応するために急遽開発されたのがFJ型エンジンである。 4気筒でフルウオータジャケットが採られ従来の加工設備が共有できるH20型エンジンをベースとし燃焼室、吸排気などは性能第一で設計された。 4気筒エンジンながら、4弁DOHC、シーケンシャルインジェクションなど高度な機構を投入し、スカイライン、シルビアの高性能バージョンに搭載された。
開発の経緯:
モータースポーツ部門から、国際ラリーで戦えるエンジンが欲しいとの要求は強く、当初から4気筒2ℓクラス高性能エンジンとして計画。 スカイラインへの搭載が先行することとなったので、当時の車両主管の櫻井眞一郎には、エンジン屋の自由にやって欲しいと言われ、まっすぐに伸びる吸排気マニフォールドなど性能本位で仕様を決めることができた。
主要諸元:
水冷直列4気筒ガソリンエンジン。DOHC。 スカイラインR30型に搭載
FJ20E:Bore 89.0mm × Stroke 80.0mm。 排気量:1.990ℓ。 最高出力:150ps/6000rpm。 圧縮比:9.1。
参考)FJ24E(rally spec.): Bore 92.0mm × Stroke 88.0mm。 排気量: 2.340ℓ。 出力:280ps/8000rpm。 圧縮比: 11.5。
・シリンダブロック:鋳鉄製
・シリンダヘッド:アルミ鋳造。ペントルーフ燃焼室
・弁、弁機構:4弁DOHC 直動
1980年代後半に開発部門では、1990年に世界一の車を開発しようという活動「901」活動が展開された。 その目標の一つがスカイラインGT-Rの復活だった。 そのためレース規則を考慮しつつ実用でも名実ともに世界一といえるエンジンとしてRB型エンジンをベースに排気量2.6ℓツインターボチャージャを搭載した専用エンジンを開発した。
これを搭載したR32型スカイラインGT-Rおよびその後継車は、目論見通りレースでも活躍し、多くの熱狂的なファンを生み出した。
開発の背景:
排気量を2.6ℓとしたのは、1990年よりのグループA参戦が予定されており、そのレギュレーションで排気量区分に対する最低車両重量の規定からパワーウェイトレシオの損失を少なくし、戦闘力を最大限に高めるためである。
発進でのターボラグを感じることなく加速でき、高速域での鋭い伸びを体感できるように、ターボはセラミック化され、ターボの大きさは、コンプレッサはギャレットT3、タービン側に同T-25を組み合わせた仕様とした。
主要諸元:
水冷直列6気筒ガソリンエンジン。 DOHC。 スカイラインR32型に搭載。
Bore 86.0mm × Stroke 73.7mm。 排気量 :2.568ℓ。最高出力:280ps/6800rpm。圧縮比: 8.5。
・シリンダブロック:RB型をベースに各部を強化
・ピストン:クーリングチャンネル付き
・弁機構:直動式4弁DOHC。 排気弁にナトリウム封入
・吸気系:6連スロットルチャンバ
2001年東京モーターショーで『グローバルに日産を象徴できるスーパースポーツを作る』と発表し、2005年・同ショーでプロトタイプが展示され、2007年から発表された。 全くの新型としてV型6気筒3.8ℓ ツインターボのコンパクトかつパワフルなエンジンが開発された。 現在まで細かな改良が続けられ,出力や燃費性能を向上させ続けている。
横浜工場の専用組み立てクリーンルームで、熟練工「匠」により1台ずつ手組している。
開発の経緯:
出力性能と環境性能をより高い次元で両立させるために小型・軽量に優れるV型6気筒を採用し、ツインターボ化によるダウンサイジングを図った。 日産独自のプラズマスプレーコーティングボア、薄肉ステンレス鋳鋼排気マニフォールド、マグネシウム製オイルパン等新材料を適所に用い、出力と環境性能を高度にバランスさせた。
主要諸元:
水冷V型6気筒ガソリンエンジン。 DOHC。 GT-R R35搭載。
Bore 95.5mm × Stroke 88.4mm。 排気量:3.799ℓ。 出力:353kW/6400rpm(2007年発表時)。 圧縮比:9.0
参考)2014年NISMO仕様:441kW/6400rpm
出力の表記は発売当時のままとした。
1kW = 1.35962[PS](仏馬力)
1kW = 1.34102 [HP](英馬力)
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