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Vol.15 No.1

強靭でしなやかさで、⼒強さを兼ね備えたディーゼルエンジン
皆川 俊一
Shunichi MINAKAWA
日産エンジンミュージアム 学芸員
Nissan Engine Museum Curator

アブストラクト

 1960年代からのディーゼルエンジンの、製品および技術進化の歴史を紹介する。 概略年表を表1に示す。

SD 型 (1964~1979年) 図1

 1960年初頭、国内会社は小型車用ディーゼルエンジンの実用化に向けて活発な開発が行われていた。 日産ディーゼルによりG型ガソリンエンジンの設計コンセプトをベースに2.0ℓクラスのディーゼルエンジンを企画、開発した。
 ベースのSD22型2.2ℓ4気筒をベースに排気量違いや、6気筒エンジンを開発し、1970年代までの小型商用車の主力エンジンとして活躍した。
開発の経緯:
 H型ガソリンエンジンと載せ替えを容易にするためコンパクトとし、しかも高性能、高耐久性を狙った。 構成部品は可能な範囲でH型エンジンと共用し、補器類の配置も極力H型エンジンと同じにした。
主要諸元:
水冷直列4/6気筒ディーゼルエンジン。 OHV。 日産ジュニア40型搭載
SD22型:Bore 83.0mm × Stroke 100.0mm。 排気量:2.164ℓ。 出力:60ps/3600rpm。 圧縮比:22.0

LD 型 (1979年~2001年) 図2

 1970年代 第一次オイルショックの影響から世界的に乗用車エンジンに高い燃料経済性が求められた。 そこで脚光浴びたのがディーゼルエンジンであり、日産として、初の乗用車用ディーゼルエンジンLD28型を開発した。 加工設備をガソリンL系エンジンとの共用性を重視し、極力コストを抑えるとともに、燃料噴射システムに最新のBOSCH製VE型を用いるなど、世界最先端の仕様とし、セドリックをはじめ、多くの車両に搭載され活躍した。 4気筒版(LD20型)も開発された。
開発の経緯:
 ガソリンL系エンジンに対して適切な圧縮比をとるために、シリンダブロックはロングストローク化し、デッキハイトはカム駆動チェーン1ピッチ分高くした。 北米向けにはEGR、酸化触媒、ブローバイ還流装置を追加した。
主要諸元:
LD28:水冷6気筒ディーゼルエンジン。 SOHC。 セドリック430型搭載。
Bore 84.5mm × Stroke 83.0mm。排気量 2.792ℓ。最高出力:91ps/4600rpm。 圧縮比:22.0。
・シリンダブロック:鋳鉄製
・シリンダヘッド:鋳鉄製。リカルドコメット渦流室式燃焼室
・弁機構:エンドピボット式2弁SOHC。ローラチェーン駆動

YD 型エンジン (1998年~) 図3

 1990年代後半に欧州で燃費、環境対策として、また国内でリクリエーショナル・ビークル(RV)の拡大に対応するため、小型乗用車用ディーゼルエンジンの近代化が課題となり、これまでのRD型、CD型、TD型をそれぞれ少量生産していたものを2種類に統合し、環境性能と走りを両立するエンジンとして登場した。 2.5ℓ以下をYD型としてミニバンやRVなので多くの車種に搭載された。
 3ℓより大きい排気量はZD型エンジンとした(後述)。
開発の経緯:
 LDエンジン開発後、継続した開発がされていなかった。当時電制ポンプが主流になりつつあったが、コストが高いので売れないという固定観念で開発が後手になっていた。 その間中央研究所では地道に燃焼を研究し、世界初の大量EGR、遅角燃焼によりNOxとスモークを両立して削減できる方法を開発(MK燃焼)。その後の世界標準となった技術である。
主要諸元:
YD25DDTi:水冷4気筒ディーゼルエンジン。 DOHC。 プレサージュU30型搭載。
Bore 89.0mm × Stroke 100.0mm. 排気量:2.488ℓ。最高出力:110kW/4000rpm。 圧縮比:17.5
・シリンダブロック:鋳鉄製ディープスカート型
・シリンダヘッド:アルミ合金製、クロスフロー式。1気筒当たり6本ボルト締め
・弁駆動:4弁直動式DOHC
・燃料噴射システム:初期140MPa。 2007年 コモンレール式180MPaに変更
・ターボチャージャ:可変ノズルターボ

ZD 型エンジン (1998年~) 図4

 3ℓより大きなクラス用として開発されたエンジンで、先行して開発されたYD型と共通の燃焼コンセプトで、燃費、静粛性、良環境対応、高トルクで好評を博した。
主要諸元:
ZD30DDTi:水冷4気筒ディーゼルエンジン。 DOHC。 テラノR50型搭載。
Bore 96.0mm × Stroke 102.0mm。 排気量:2.953ℓ。 最高出力:125kW/3600rpm。 圧縮比:17.9。
・シリンダブロック:鋳鉄製。 ラダーフレーム付き
・シリンダヘッド:アルミ鋳造製。
・弁駆動:直動式4弁DOHC ギヤチェーン駆動

出力の表記は発売当時のままとした。
1kW = 1.35962[PS](仏馬力)
1kW = 1.34102 [HP](英馬力)

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