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Vol.15 No.2

ディーゼル燃焼Ⅱ
吉冨 和宣
Kazunori YOSHITOMI
日野自動車株式会社/本誌編集委員
Hino Motors, Ltd/JSAE ER Editorial Committee

講演紹介(1)燃焼室容積を犠牲にしない高圧縮比化

 齋藤ら(1)は、熱効率向上に寄与する高圧縮比化の実現手段として、流動抑制などの課題がある燃料室の狭小化(BASE)ではなく、行程長さの延長(LS)による手段を検討した。KIVA-3VでのITE算出結果をみると、BASEは圧縮比24がピークだが、LSは圧縮比が高くなるに従い増加を示す。PmaxとNOxにおいて、圧縮比が高くなるに従いBASEは増加するが、LSは一定の水準を示した(図1-1)。単気筒エンジンでのBASEに対するLSのITEは、低負荷で+0.3pt、高負荷で+1.2ptの効果が得られた。同一回転数だとLSでは等容度が下がるため、燃焼後の高い温度・圧力の持続時間が短くなることが冷却損失低減の一因となりITEを向上させる(図1-2)。LSの機械損失の低下要因は、連幹比が低下したことによる摩擦損失は増加したものの、Pmaxが抑制されたためである。NOx排出量は、同一λではLSの方が増加する傾向となった。

講演紹介(2)CN燃料の将来導入を見据え、基本的な燃料性状がすす粒子のナノ構造に及ぼす影響の解析

 黒島ら(2)は、将来のCN燃料の燃料設計に寄与するため、セタン価や組成、物理的特性といった基本性状や機関の運転状態が、すすのナノ構造に及ぼす影響を詳細解析した。すす粒子のグラファイト化は酸化反応性を悪化させるため、DPFの強制再生に使用される燃料増加を招く。今回は燃料中のアロマ分に着目し、JIS2号軽油とセタン価を合わせたパラフィン系燃料(CN55)を用意した(表2-1)。粒子のグラファイト化度はラマン分光法、酸化反応性は熱重量測定により実施した。実機試験の結果、燃焼では筒内圧力、熱発生率に対する燃料の物理的特性の影響は小さいものの、性能では黒煙にてCN55が明確に少なくなったことは、アロマ分の差と考えられる(図2-1)。炭素結晶子サイズ(La)もCN55では小さくなることからメカニズムの解明を試みた。すす粒子の表面成長におけるアセチレン付加反応機構を前提に、燃焼状態での高温滞留時間とLaの関係性を推測し整理した結果、CA10-CA90とLaの相関が高く、Laは燃焼期間中に決定されると推定できた。LaはJISの方が大きいため、この要因はアロマである可能性が高い(図2-2)。

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【参考文献】
(1) 齋藤 大晃、橋本 宗昌、石井 義範、小澤 恒:重量車用ディーゼルエンジンのロングストローク化による高圧縮比化の評価、公益社団法人自動車技術会 2024年秋季大会学術講演会講演予稿集、20246210
(2) 黒島 悠、小原 瑞貴、 稲葉 一輝、 林田 和宏:ディーゼル機関の運転条件および燃料性状がすす粒子のナノ構造に及ぼす影響、公益社団法人自動車技術会 2024年秋季大会学術講演会講演予稿集、20246212