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Vol.15 No.2

エンジン部品・潤滑油・トライボロジー
三原 雄司
Yuji MIHARA
東京都市大学
Tokyo City University

講演紹介(1)

 潤滑油による内燃機関の摩擦損失低減法として、本研究ではウルトラファインバブル(UFB。本稿ではナノバブル)を潤滑油に発生させて往復動摺動部での摩擦損失低減効果を調べている。堀場ら(1)は主に化学工学分野で活用が進む微細気泡のうち、超微細孔式により生成したUFBがピストン系摩擦力を低減する効果を調べており、図1に示すように図中点線で囲った領域のクランク角度のみ摩擦低減効果が確認され、バブル密度の増加によって摩擦は低減する傾向はあるが、上限は存在することが示唆された。1500rpmの実験結果例では高負荷程低減効果が高く、最大でFMEP(ピストン系摩擦平均有効圧力)が15%の低減結果が得られており、燃費向上に向けた効果も期待できる。今後は摩擦低減のメカニズム解明による更なる摩擦低減効果の実証を期待したい。

講演紹介(2)

 千葉ら(2)はピストンリングの性能予測に特化したMBDツールとしてLOC(潤滑油消費)を対象とし、リング挙動・ブローバイ計算モデル・CFDによる油量計算を定式化し、短時間でオイル消費を予測できる計算モデル(ID-LOC)を提案した。可視化実験等で得られた油膜分布を実験係数として計算時間の短縮なども考慮した。この結果、ディーゼルエンジンの場合、実測値と計算結果の比較では誤差は最大で-5.8g/hから+5.5g/hとなり、従来のLOC測定法と比較して十分な予測精度を有していることが示された。また、LOC予測計算時間では、CFDモデルでは504hr掛かったが、提案のMBDツールでは0.13hrと大幅に低減している。今後は多くの内燃機関のリングパック使用への適合を進め、有用な設計ツールとなることを期待したい。

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【参考文献】
(1) 堀場 海、福田 将也、星野 秀介、岩田 拓実、及川 昌訓、三原 雄司:超微細孔式によるナノバブルを含むエンジン油がピストン系摩擦損失低減に与える効果 -ナノバブルの発生密度と摩擦低減効果の相関-、自動車技術会秋季大会講演論文集、No.20246284、2024年10月
(2) 千葉 洸、望月 和夫、鈴木 逸良、矢澤 勝、飯島直樹:ピストンリング性能予測のためのMBDツール開発、自動車技術会秋季大会講演論文集、No.20246283、2024年10月