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Vol.15 No.2

排出ガスⅠ
大西 浩二
Koji ONISHI
本誌編集委員
JSAE ER Editorial Committee

講演紹介(1)実機と計算モデルを用いたゼオライト吸着式車載CO2回収装置の基礎検討

 松田ら(1)図1に示す車載CO2回収装置に関する研究成果を発表した。エンジンから排出されたCO2をゼオライト吸着層に吸着させ、吸着したCO2は真空ポンプを用いて減圧脱離させる。2系統設けた吸着層の吸着と脱離を交互に切り替えて運転することで、連続したCO2の吸着と脱離を行う。図2は定常運転における実機と計算モデルを用いた検討結果を示す。破線で示す吸着層への流入CO2濃度レベルと実線で示す吸着層出口のCO2濃度の変化から、排気中のCO2を吸着/脱離できることと、CO2を脱離することで吸着剤が再生できていること、および計算結果が実機の挙動とおおむね合うことが確認できた。
 車載システムの実用化には回収装置の消費エネルギー削減や脱離したCO2の車載貯蔵手段の決定等の課題を解決する必要があるが、電動化が困難な車両のためのCO2排出対策案の一つとして受け止めた。

講演紹介(2)2050年の日本国内における次世代車普及の割合とCO2排出量、各種排ガス成分排出量の推計

 金成ら(2)が開発した自動車排出ガス量推計モデル(図3)は、技術進展と消費者効用を考慮し、自動車への対策だけでなく交通流対策等も評価できる特徴をもつ。この推計モデルを用いて2050年の日本国内における自動車保有台数と技術別割合、および排出ガス量の推計を行った。想定したシナリオは将来における新車の技術水準が2013年を維持するものとするBaU、燃費基準を達成し、かつ次世代車の技術開発が現状の成り行きで進展するADV、ADVシナリオにEuro7排気対策を追加したE7L(低価格)とE7H(高価格)、ADVに交通流対策を導入した場合のITA等である。
 図4は2013年と比較した2050年の乗用車保有台数とその内訳の推計結果を示す。保有台数が現在よりも20%以上減少することと、次世代車の大部分をHEVが占め、Pure EVの普及は保有台数の数%に留まると推計している点が興味深い。図5はTank to WheelでみたCO2排出量の推計値である。次世代車の普及に伴いおおむね半減することを示している。図6はNOx排出量の推計値である。ガソリン車ばかりのBaUシナリオであっても車両の入れ替わりによって1/4に減少し、次世代車が普及するシナリオでは1/10以下になる。NMHCの推計値についても同様の傾向がみられた。カーボンニュートラルの実現は容易ではないだろうが、少なくとも自動車からの大気汚染物質の排出については将来飛躍的な減少が期待できると感じた。

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【参考文献】
(1) 松田 啓嗣、山本 亮、堀越 政寛、乃生 芳尚、崎間 俊明、内田 健司、原田 雄司:車載CO2回収技術の研究(第2報)、自動車技術会2024年秋季大会学術講演会講演予稿集、No.20246291
(2) 金成 修一、平井 洋、伊藤 晃佳、鈴木 徹也:中長期における自動車排出ガス規制強化時の排出ガス量および温室効果ガス排出量推計、自動車技術会2024年春季大会学術講演会講演予稿集、No.20246287