TOP > バックナンバー > Vol.15 No.4 > アンモニア・水素
三菱重工業の鈴木ら(1)は、水素エンジンのノッキング頻度の予測を行っている。
解析ツールは市販ツールCONVERGEを用い、ユーザー定義関数(UDF)によって、水素火炎の選択拡散効果の考慮および燃料種・混合気形成に応じた燃焼行程での熱伝達量補正を行っている。ノッキングに影響を及ぼすシリンダヘッド壁面の温度算出には、流体-固体熱連成技術を適用している。解析モデルについて表1に示す。
予測された温度分布を図1に示す。ライナ壁面に近い未燃領域でノッキングが予測出来ている。またノッキング発生頻度の実測と解析を比較した結果を図2に示す。点火時期を進角したふたつのケースでは実測と解析は良く一致している。ただし点火時期を遅角した1ケースでは実測で30%の発生頻度に対して、解析ではノッキングが発生しない結果となっており改善の必要がある。
本報告手法は、市販CFDツールにUDFを組み込むことで独自の解析技術とし、予測の難しいノッキング現象の解析に挑戦している点が参考となる。精度上はまだ改良の余地はあるが、水素エンジンの開発においてキーとなるノッキング現象を予測できる手段として、今後の発展が期待される。
三井E&Sの阿部ら(2)は 、大型舶用2ストローク水素焚き機関の燃焼試験と数値解析の結果について報告している。燃焼試験は表2に示す4気筒の試験機関を用い、燃焼システムは図3に示すようにガス直噴・パイロット油着火方式である。また数値解析はCONVERGEを用い、解析モデルは表3に示す通りとした。ディーゼルモードと水素ガスモードでの筒内圧力と熱発生率の比較を図4に示す。いずれの燃焼モードにおいても実測値と解析値が良く一致している。また筒内ガス温度およびNO濃度の分布予測結果を図5に示す。ディーゼルモードに比べて水素ガスモードの方が、12degATDC以降の燃焼が活発で、NO濃度も高くなっていることが分かり、この傾向は実測と同じである。
本研究ではシリンダ直径500mmの超大型エンジンで、水素直噴での燃焼試験と数値解析を実施した点が高く評価でき、今後の水素直噴エンジン開発の参考になる。
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