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Vol.15 No.4

制御・最適化
吉冨 和宣
Kazunori YOSHITOMI
エンジンレビュー編集委員/日野自動車株式会社
JSAE ER Editorial Committee / Hino Motors, Ltd.

講演紹介(1)イオン電流による異常燃焼の検出手法

 Kimら(1)は、将来のCN燃料がエンジンにて最大限に性能を発揮するためには、燃料の組成の違いをオンボードで監視し、それに対するエンジン制御が必要であると考えた。そのため、燃焼条件下で計測したイオン電流と燃料組成の関係を調査した。ノイズやサイクルバラツキを排除しイオン電流の特性を活用するため、主成分分析によるデータ処理を活用した。ガソリンによるベース条件の試験結果より、基準となる主成分は20で累積寄与率は98%となることが得られ(図1)、これらの主成分がイオン電流データの特徴を捉えるものであり、外れた値が異常スコアとなる。異常スコアが高いほど、基準とする燃焼との差異が大きい。ガソリンにメタンを追加した燃焼試験により検証した結果(図2)、異常スコアはメタン流量を増加し当量比が1に近づくにつれて低くなり、ガソリン噴射量を減少すると高くなることが分かり(図3)、本研究の手法の有効性を確認できた。

講演紹介(2)新たなエンジンシステムによる燃焼のブレークスルー

 劉ら(2)は、ハイブリッド車に特化した小型で高効率な内燃機関開発を目指し、2ストローク対向ピストンエンジンの研究を進めている。本研究では、機関回転数と点火位置、点火タイミングの影響による燃焼改善を検討した。エンジンは、やまびこ製PB770を2機向かい合わせて締結している(図4)。点火位置の比較として、1点点火を2種類、2点点火を1種類で比較した(図5)。ガソリンで試験した結果、最適な点火位置は、エンジン回転に関わらず2点点火であり、筒内の火炎伝播速度が最も早くなるため不完全燃焼の割合が減少し、点火を遅角した場合でもBMEPの低下量は少なく、高トルクを得られる条件も存在する(図6)。オクタン価50の燃料での影響も試験した結果、点火タイミングによる出力への傾向はガソリンと同様だが、異常圧力上昇の発生が確認された。

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【参考文献】
(1) Kim Jihoon、林 航平、山﨑 由大:ガソリンエンジンにおけるガス燃料混合燃焼とイオン電流の関係、2024年 第35回内燃機関シンポジウム 予稿集、講演番号65
(2) 劉 金茹、福島 惇平、山崎 良明、大川原 育未、渡邊 操、衛藤 邦淑、野澤 勝、飯島 晃良:小型2ストローク対向ピストンエンジンの燃焼改善に関する検討、2024年 第35回内燃機関シンポジウム 予稿集、講演番号66