少子化による学生の減少に加え、近年の若者の理科離れといった深刻な状況は、日本の自動車産業にとって将来の国際競争力・企業競争力の低下、優秀な技術者の人材不足につながりかねません。また、最近の工学系大学では、実習や設計・製図などのカリキュラムが減少しており、欧米に比べ、ものづくりの機会が不足しています。
一方、米国では「Formula SAE®」を開催するなど、学生が実際のものづくりを通して自分たちの能力や知識を、発揮できる場を提供されており、産学官の協力のもと、 人材育成の基盤づくりが根付いています。しかし日本では、全国的なものづくりコンテストとして、 ソーラーカー大会やロボットコンテストがありますが、自動車技術分野で活躍を目指す学生にとっては、習得した専門技術を発揮しうる設計コンテストがない状況です。
学生たちが実際にものに接し、ものを創っていくことによって、技術の理解を深め、実践的な能力を養い、より高いレベルに意欲的に取り組んでいく。 ものづくりの本質やそのプロセスを学ぶとともにチーム活動やものづくりの厳しさ、面白さ、喜びを実感できる、そんな環境づくりを通じて、創造性に満ちた技術者の育成を目指しています。
米国Formula SAE®
教室の中だけでは優秀なエンジニアが育たないことにいち早く気づいた米国は、1981年(4輪自動車生産で日本が米国を追い抜き世界一になった翌年)から『ものづくりによる実践的な学生教育プログラム』として Formula SAE®(SAE International主催) を開催しました。最近ではビッグ3とSAE Internationalがコンソーシアムを組んで、100校を超える大学チームが参加する盛大かつ 国際的な大会になっています。大学の80%以上では単位として認められています。会場では、多くのサポート企業のもとで、 将来自動車産業のエンジニアとして活躍したい学生のリクルーティングの場としても機能しています。また、1998年にはイギリスで、2000年にはオーストラリアで同様のルールによる競技が開催されています。Purpose~趣旨~
- 1.趣旨
- 主役である学生が自ら構想・設計・製作した車両により、ものづくりの総合力を競い、産学官民で支援して、自動車技術ならびに産業の発展・振興に資する人材を育成する。
- 2.基本方針
- 学生に、学会として、ものづくりの機会を提供することにより、
- 1.学生の自主的なものづくりの総合力を育成する。
- 2.学校教育と連携する実践的な学び場としての教育的価値を高めていく。
- 3.運営指針
-
- 1.安全確保を最優先とした、ものづくり検証の場とする。
- 2.産学官民連携による運営とする。
- 3.個人・法人の広範なボランティアによる運営とする。
- 4.公益事業として運営する。
- 5.企業の枠を超えた技術者の交流に資するため、学生フォーミュラ参加者のネットワークを構築する。
Idea~大会理念~
ものづくりの機会を提供することによって、大学・高専等の工学教育活性化に寄与する。
- 学生自らがチームを組み約1年間でフォーミュラスタイルの小型レーシングカーを開発・製作することによって、学生がものづくりの本質やそのプロセスを学び、ものづくりの厳しさ・おもしろさ・喜びを実感する。
- 競技会では、走行性能だけでなく、車両のマーケティング、企画・設計・製作、コスト等のものづくりにおける総合力を競う。
- 学生に対しては自己能力向上の場、企業に対しては将来を担う有能な人材発掘の場を提供する。