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ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ

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1981年、世界初の地図型ナビゲーションシステムであるホンダ・エレクトロ・ジャイロケータが登場した。その後、デジタル地図ナビゲーションシステムとして進化し、1995年には、日産自動車から世界で初めて鳥瞰図を採用したバードビューナビゲーションシステムが商品化された。さらに、2003年には情報通信技術と結合して、利用者の車両から交通情報を収集して提供する世界初のフローティングカーシステムであるホンダ・インターナビ・プレミアムクラブが商品化された。
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世界初の地図型ナビゲーションシステム。
その原理は、精密なガスレートジャイロセンサとタイヤ回転からの距離センサにより、自動車の“移動方向”と“移動量”を検出する。この二つの運動の刻々の変化をマイクロコンピュータで瞬間的に積分し、これらを連続して記憶し加算することにより自動車の運動量を求め、それを透明な地図シートをセットしたブラウン管に走行軌跡として表示するものである。これにより自動車の走行経過と現在位置が地図シート上で極めて正確に確認でき、進むべき経路の選択が容易にできる。

保管場所 ツインリンクもてぎ内ホンダコレクションホール
栃木県芳賀郡茂木町大字桧山120-1
製作(製造)年 1981
製作者(社) 本田技研工業株式会社
資料の種類 量産品
現状 非公開
型式名ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ
通称名ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ
技術用途車載ナビゲーション装置
適用車種1981 ACCORD SALOON、1981 VIGOR SALOON
製作年1981
実用化年1981
設計者(株)本田技術研究所
協力者アルプス電気株式会社、アルパイン株式会社、スタンレー電気株式会社、株式会社昭文社、三菱鉛筆株式会社
装置構成表示部、航法コンピュータ、方向センサ、走行距離センサ、専用地図、マーキングペン
表示部6インチ モノクロ(グリーン)CRT
性能機能6インチモノクロ(グリーン)CRT上に走行軌跡、その先端に自車位置マーク(大きな丸印)と車両の方位マーク(十字印)を表示する。表示は縮尺、位置、回転角度、輝度、コントラストを変更することができる。地図シートは表示部と操作部の間にある地図挿入口に差し込み、軌跡表示に合わせて回転、移動した後に地図固定レバーを押し下げることによって地図シートを固定する。地図シートにはイレーサブルな専用ペンで目的地や予定コースを記入することができる。

主要諸元
表示  P31蛍光体6インチCRT
    有効表示画面サイズ:80 mm × 100 mm
    走行軌跡表示長: 80 mm MAX
    有効縮尺可変範囲 1/7,000 ~ 1/400,000
コンピュータ 16 bit マイクロプロセッサ(外部バス 8 bit)
     ROM 10 KB, SRAM 1 KB, DRAM 16 KB
走行距離センサ 8極マグネット回転、ホールICピックアップ
方向センサ ガスレートジャイロセンサ(ヘリウムガス)
    検出範囲 -70 deg/sec ~ +70 deg/sec
    出力感度 5 V/(100 deg/sec)
地図 0.1tルミラーフィルム透過性多刷オフセット印刷シート
    シートサイズ A5判
    基本縮尺 1/250,000
電源 DC 12 V 自動車用バッテリ
    消費電流 平均 3.5 A(予熱時 12 A MAX)
重量 約 9 kg
使用温度範囲 表示部 -30℃ ~ +80℃
    コンピュータ  -30℃ ~ +60℃
    走行距離センサ -30℃ ~ +120℃
    方向センサ  -30℃ ~ +60℃
効果 本装置を利用しての実走評価テスト、ユーザーモニタテストを、混雑した都心の道路、幹線から外れた地方道、高速道路および山岳路など種々の条件下で実施した結果、地図シートの取り扱い性などに若干の難は残るが総合的な評価として次のような効果が大きかった。
・気苦労の多い初めての道での安心感が大きい。
・予期せぬ渋滞や工事に出会っても、地元のドライバと同様スムーズに迂回できる。
・遠距離走行時に最短コース、最適コースを途中で気軽に選べるのでドライブの疲れ低減や、時間やガソリンの節約も図れる。
・うっかり道を間違えても、間違えたことがすぐわかり、すぐに修正もできる。
・暗い夜の不案内で標識や目印も見かけにくいようなところで、不安を解消し、良き道案内の役目を果たす。
エピソード・話題性 それまでの目的地方向と残りの直線距離のみを表示するナビゲーションシステムに対し、地図上で直接自車位置を知ることができる世界初の地図型ナビゲーションシステムとしてアコード/ビガーに搭載された。地磁気センサではなくジャイロを採用し、外乱に影響されずに方位角を検知可能とした。地図型、ジャイロ利用はその後のナビゲーションシステムの主流となった。
特徴 自車の過去の走行経路と現在位置が地図シート上で正確に確認できるので、これから進むべき道路と方向が明快に示される。また、位置誤差が生じても走行軌跡と道路形状を人間が照合することによって地図上の自車位置を容易に判断、修正可能である。
参考文献本田技研工業株式会社 HONDA NEWS、世界で初めて自動車用ジャイロを実用化した運転補助装置「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」を開発、1981年8月24日
本田技研工業株式会社 広報資料、ホンダ エレクトロ・ジャイロケータ、1981年8月24日
田上ほか、自動車用慣性航法装置"エレクトロ・ジャイロケータ"、自動車技術、Vol.36, No.5, 1982
田上ほか、自動車用慣性航法装置の開発、計測と制御、Vol.21, No.7, 1982
k. Tagami et al., "Electro Gyro-Cator" New Inertial Navigation System for Use in Automobiles, SAE Technical Paper 830659, 1983